ハーグ条約3
出典: Jinkawiki
≪ハーグ条約≫
オランダのハーグで採択された、国家間の不法な児童連れ去り防止を目的とした多国間条約である「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の通称。1983年発行。「国境を越えて子供を不法に連れ去る、あるいは留め置くことの悪影響から子供を守る」ことを目的としている。2013年5月現在、90か国が加盟。主要8カ国では日本だけが加盟していない。日本は今年5月に加盟を承認、6月に手続き法が成立し今年度内にも正式加盟する。手続き法では外国にいる親が日本で裁判を起こすことができることや、子や親が外国の親から暴力を振るわれるおそれがある場合は、裁判所が返還を拒否できる規定を盛り込んだ。
≪内容≫
16歳未満の子どもに適用される条約で、基本理念は、子どもの利益を最優先することである。そのため、違法に子どもが海外へ連れて行かれる場合に「その子どもを被害から守ること」、違法な連れ去りが起こった場合に「定住国(常居住地)に子どもを返還すること」、「子どもと親面会権の履行を保護すること」を目的としている。
≪仕組み≫
夫婦の一方が、他方配偶者に無断で子どもをつれて他の締結国に出国した場合、他方配偶者は、子どもが住んでいた締結国の中央当局に子どもの連れ戻しを申立てる。子どもが住んでいた締結国の中央当局は、子どもが現在住んでいる締結国の中央当局に通報する。子どもが現在住んでいる締結国の中央当局は、子どもの所在を確認し、子どもの返還に関する司法または行政手続きが行われ、子どもの任意の返還を促し、 任意の返還がなされない場合には、子の返還命令を発するという一連の仕組みを定めている。 そのため、政府はハーグ条約締結と同時に、上記仕組みに対応した国内法の整備を行うものと予想される。
≪メリット・デメリット≫
ハーグ条約に日本が加盟することのメリットはなにか。ハーグ条約に加盟することで、日本では、加盟国の中央当局や関係機関との連携・協力が促進され、国際的な子の連れ去りや面会交流などの問題解決が迅速かつ円滑になされる。また、日本から国境を越えて不当に連れ去られた子も迅速に返還を求めることが可能になる。国内的にも子の親権や監護の法制度、社会的支援制度の整備が促進される。しかし、他方、海外で孤立し逃げ帰ってきた連れ去り親(TP)と子どものケアや支援もしなければならない。外国人夫のDVや子育てに対する執拗な干渉からようやく逃れて落ち着いた生活を取り戻していた連れ去り親にとっては、元の居住国に子が戻されることで、平穏な生活が脅かされかねない。メリットとしては、国際協力の促進、国際的な信頼度の獲得、世界基準への適合などがあげられるが、他方、自国民保護、独自の家族観、親子観の尊重、DVや暴力に対する対策の不備などデメリットも予想される。日本では、今、外務省が中央当局を引き受けることになったために、中央当局の任務や権限、他の関係機関との連携協力について、またハーグ条約の返還手続については、裁判管轄の集中、審理手続、返還拒否事由、調停などについて、国内実施法の整備が急がれている。しかしながら、ハーグ条約は、単に国際的外交的問題というにとどまらず、国内問題、とくに日本国内での離婚後の親子のあり方や社会的法的支援とも密接にかかわっている。今回のような事件を起こさないために、子どもの利益を守ることを中心にして、関係機関の役割分担と連携とが図られなければならない。
≪参考文献≫
多文化共生ポータルサイト http://www.clair.or.jp/tabunka/portal/born/right_problem.html
毎日jp http://mainichi.jp/opinion/news/20130805ddm007010007000c.html
KR