ハーバード大学の入試

出典: Jinkawiki

[概要]

米国のトップ大学は、願書入試を採用している。願書入試とは、願書を提出し、願書の内容で合否決定がなされるという受験プロセスのことである。 また、ハーバードやイェールをはじめとする米国のトップ大学は、各大学共通の「コモンアプリケーション」という願書システムを活用している。この願書システムは、WEB上で志願者の情報を入力し、受験に必要な各種証明書も添付できる優れたシステムで、出願の際には、紙の書類を一切使わなくてもすむようになっている。 つまり、日本の高校生がハーバードを受験する際は、ハーバード(ボストン)に行って試験を受ける必要はなく、日本にいながらにして、自宅のパソコンからWEB出願するだけで、合否の結果を待つことができるのである。

[項目]

「ACADEMICS」という項目では、学校の評定平均値(定期テストの成績)やSAT(米国の統一テスト)の得点を記入する。さらに、日本の受験生は、TOEFLなどの英語力のスコアも記入させられる。 また、SATやTOEFLは、年に複数回受験できるので、受験生は低学年の時から計画を立てて受験する。このため、出願のタイミングでは、自分のスコアを願書に記入することができる。 「Honors」という項目では、中学3年から高校3年の間に取った賞を記入する。賞ならなんでも良いわけではなく、あくまで学問(アカデミックな)領域の受賞歴に限定される。 また、受賞のレベル感も以下の4つの区分で記入しなければならない。 S(School)…校内レベル S/R(State/Region)…都道府県大会や地区大会レベル N(National)…全国大会レベル I(International)…世界大会レベル 具体的には、「数学や物理などの国際オリンピックで金メダルを取った」「英語ディベート大会で世界大会に出場した」などの受賞歴を記入する。

世界大会レベルの賞を取っていれば、受験を有利に運ぶことができるが、この欄が空白だと不合格になるというわけではない。 部活動や生徒会活動など、学問(アカデミックな)領域以外で活躍している生徒は、次の「Extracurricular」の項目でアピールすることになる。 ここでは、部活動や生徒会活動、ボランティア活動や仕事の経験など、課外活動の実績を記入する。年間でどれぐらいの時間をかけて、どのような役職で活動したかを記入する。 この項目を通して、受験生の主体性や行動力、そして、コミュニケーション力やリーダーシップ力がだいたいわかる。つまり、周りの人と常にかかわりながら、人を巻き込んで結果を出す力があるのかを判断することができる。

[エッセイ]

合否の決め手は、「エッセイ」である。 “Personal Essay”と言われる自分を表現するエッセイを提出するのだが、これで何を見るのだろうか? それは、受験生の“自分らしさ”である。 成績や受賞歴、課外活動の「履歴書」だけでは、その生徒らしさがなかなか伝わってこない。米国トップ大の受験では、SATが満点で、学校の成績もオール5。そして、国際オリンピックで金メダルを取り、生徒会長をやっていたという受験生は、世界中でざらに存在するからだ。エッセイは、まっさらな紙に何を表現しても良い。このエッセイに取り組む作業は、自分自身を作品化する創作活動であり、自分の感性を最大限に活用したアート活動といえよう。このエッセイを通して、生徒のオリジナリティー、クリエイティビティーがあらわになる。 エッセイのトピックを選定する過程で、極めて高い“自己分析能力”や“メタ認知能力”も問われる。このような能力も日本の入試では、なかなか見極められない部分である。 以下の内容は、近年の入試で出題されている最新のエッセイである。 以下の6つのトピックから1つ選択し述べなさい。 (1)これまでの人生における特異な出来事について (2)海外旅行や海外での生活体験について (3)未来のルームメイトに向けた手紙について (4)自分にとって最も意味のあった知的体験について (5)大学教育を受けるにあたって望むこと (6)この1年間であなたが読んだ書籍について

[面接]

多くの米国トップ大学は面接を実施しているが、この面接はその大学の卒業生が行っている。日本の高校生がハーバードを受験する場合、日本に在住する、外国人または日本人のハーバード卒業生が面接官となる。どちらに当たるかは運だが、どちらにせよ、面接は英語で行われる。 インタビューの場所もまちまちで、面接官が勤務する会社に呼ばれて会議室のようなところで行われる場合もあれば、もっとカジュアルに喫茶店で行われる場合もある。時間は30分から1時間が一般的だが、長いときは2時間以上行われるケースもある。 処理能力 vs. 人間力 インタビューの評価基準や点数の付け方は、非公開のため詳細は不明だが、願書の内容があまり良くなくても、面接で一気に逆転し合格する場合もあれば、願書の内容が良くても、面接でうまくいかなくて不合格になってしまう場合もある。 この面接で何を見ているかというと、優秀な生徒であるか? を審査する以上に、その生徒が大学に入った後の貢献度、その生徒がやりたいことが実現できそうかどうかなど、フィット感やマッチ度を見ている。 大学と生徒のマッチングキーが、1回限りの筆記試験のみという東大と異なり、米国のトップ大は、願書の内容に加えて、面接で大学と生徒の相性まで審査される。 こうした米国トップ大の入試対策は、非常に難しい。これは、受験生のみならず、指導者側にとっても非常に悩ましい問題である。 日本の入試なら、過去問を中心に学習して模試を受ければ、今後、何をしないといけないかが明確になる。だが、米国の入試には過去問も模試もない。何から手をつけていいかもわからない。さらには、合格率も一桁台と極めて低い。 過去に学び、制限時間内で正解を導く、処理能力が問われる日本の入試。唯一の絶対的な正解がない環境で、答えを見出そうとする力や人間力が問われる米国トップ大の入試――。 高校生が大学受験を通して多くのことを学び、成長するとすれば、 この相対する2つの入試で身につける学びと成長は大きな違いがある。

参考文献 ビッグ・テスト―アメリカの大学入試制度    ~知的エリート階級はいかにつくられたか~ ニコラス レマン

―カルチャーショック― ハーバードVS東大 ~アメリカ奨学生のみた大学教育~ ベンジャミン・バクマン


投稿者 F.F.C


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