バウチャー制度6
出典: Jinkawiki
目次 |
概要
バウチャー制度とは教育に関係する経費を何らかの形で政府が補助する制度である。バウチャー制度における基本的な流れとして、子どもを通わせたいと考えた保護者がこれに相当する教育経費を行政機関から受け取り学校の運営費とするものがある。具体的な補助金額や公立私立関係なく使えるようにするのかなどさまざまな詳細は学者の間でも諸説ある。
アメリカにおけるバウチャー制度
そもそもバウチャー制度の起源がアメリカであるとされるほどアメリカとバウチャー制度の関わりは強い。アメリカのいくつかの州では私立学校の授業料減税・低所得者家庭への補助などバウチャー制度の精神を具体化する方法が導入されていることからもこのことは分かる。 アメリカではオハイオ州クリーヴランド市やウィスコンシン州ミルウォーキー市において公費運営のバウチャー制度が導入されている。だが、フロリダ州のバウチャー・プランが州最高裁の違憲判決を受けたことを受け、各地でのバウチャー制度導入案がことごとく退けられてしまっている。カリフォルニア州ではバウチャー制度の導入に関して住民投票を行った。結果は反対多数で否決されてしまった。否決の原因として私立学校が政府からの援助がないために自由な運営を行える特性に差し障ることが考えられた。私立学校の多くが宗教に関係した学校であるため公費が投入されることで起こりうる問題は複雑になる可能性がある。そうした問題点がある一方で、バウチャー制度の導入によって学校間の競争が刺激され公立学校を官僚制度から解放し、運営を効率化させるなどの良い点もある。
中国におけるバウチャー制度
中国におけるバウチャー制度は2000年に長興県で始まった。当時の長興県教育局長であった熊全龍がオハイオ州クリーブランド市の教育バウチャー制度を調査し、局内での検討を行い2001年に本格的な導入が始まった。 長興県における教育バウチャー制度は学校ではなく直接児童・生徒個人に給付する形態で行われている。また、民営学校への公費支援と職業学校の活性化を目的としている点も独特なものである。これは『職業技術教育を大きく発展させるために、社会力量学校を支持し、中学生の職業学校への進学を鼓舞する』という大きな目的があるためである。 バウチャー制度は全部で三校に導入され、それらの入学者の合計は導入から二年間で1072人増加した。このことからも当初の目的を果たしていると言える。一方で給付金が低いために学校選択の直接的な理由になっていないことも明らかとなっている。
参考文献
篠原清昭(2009)『中国における教育の市場化 学校民営化の実態』ミネルヴァ書房 井之口智亮(2012)『早稲田政治公法研究(99)「多元的社会における学校選択とシティズンシップ教育 -アメリカ合衆国における公的バウチャー制度をめぐる論争を手がかりに-」』早稲田大学大学院政治学研究科 井上智賀(1998)『日本保育学会大会研究論文集(51)「幼保の補助制度を考えるⅢ:バウチャー制度の可能性」』日本保育学会大会準備委員会