バカロレア

出典: Jinkawiki

 バカロレア(baccalauréat)は、フランスにおける後期中等教育(※)の修了資格および大学入学資格のことである。多くはこの認定試験(統一国家試験)をいう場合がある。フランスではこの資格取得によって大学入学が認められるとともに、選抜を行う高等教育機関の入学試験や各種国家試験(公務員採用試験等)の受験資格としても認められる。バカロレアを確立したのはナポレオン・ボナパルトである。ちなみにバカロレアの語源は「月桂樹の実」を意味するラテン語のbaccalauriである。なお、国際バカロレアとは異なる。


目次

バカロレアの歴史

1)「中等教育修了証」および「大学入学資格」としてのバカロレアが確立するまで

 バカロレアの語源はラテン語のbaccalauri「月桂樹の実」であるが、フランス語の音韻の発展によって10世紀には騎士になろうとする若者の意として用いられていた。  それが13世紀には、大学人の間で大学での最初の学位(学士号)を意味するようになった(ただし、フランス革命後の大学廃止によって消滅)。そして、19世紀初頭のナポレオン学制(1802~)で1806年に帝国大学としての大学が復活し、のち1808年に中等教育の修了資格および大学入学資格としてのバカロレアが確立したである。

2)バカロレア確立後から

 大場(2005)によると、バカロレア取得者は、帝国大学傘下の学部へ入学することができ、また、革命後に創設された高等学院への入学試験の受験資格が与えられたという。  当初バカロレアは、人文系の試験のみであったが、1821年に自然科学バカロレアが創設されたのを機に、人文系と自然科学系に分かれた。  また、大場によると、試験方式も当初は口頭試問だけだったという。その後、1830年に記述試験が導入された。当時は仏語作文または古典翻訳に関するものだったが、1840年にラテン語作文、1853年に現代外国語試験、1864年に哲学の小論文が追加されるなど、後期中等教育の改革とともに試験内容が次第に拡大乃至改編されてきている。現在のバカロレアの内容はほぼ完全な論述試験となっている。


現在のバカロレアの種類

現在のバカロレアは大きく3つの種類に分かれている。

・一般バカロレア (général)

・技術バカロレア (technologique)

・職業バカロレア (professionnel)

(ちなみにどのバカロレアを受験するかは、前期中等教育修了時点から次第に振り分けられていく教育コースによって決定される)

一般バカロレア  一般バカロレアは主に大学や専門高等教育機関など長期の高等教育機関を志望する生徒を対象としている。

技術バカロレア  技術バカロレアは主として職業人養成を目的とされている。そのほかにも高等教育(主として短期高等教育)への進学をも目的に含まれている。このため試験は、職業試験と普通試験の二つの領域から構成される。

職業バカロレア  職業バカロレアにおいては、職業資格のひとつとしてとらえられている。だが、他のバカロレア同様、高等教育進学資格が与えられる。

ちなみに、このバカロレアの種類は時の教育政策によって変えられる場合がある。


バカロレアにおける問題点

1)無資格の生徒の就職難

 こんにちのバカロレア合格率は約8割である(大場,2005)。だが、なかにはバカロレアを取得できずに学校を離れる無資格の生徒もいる。無資格の彼らは、就職難に遭い、それが社会問題化している。

2)大学入学資格としてのバカロレア

 バカロレアは種類を問わず、原則として高等教育機関の入学が無試験で認められるため、こんにちでは非普通バカロレア合格者も高等教育を受ける例が増えてきた。しかし、バカロレアは一般的に、高等教育を受けることを前提としていないとみなされているため、非普通バカロレアには高等教育が求める要件を満たしていないものがある。そのため、バカロレアの種類によっては、保持者の高等教育での学習が継続しない例も多いといわれる。

3)バカロレア「神話」

 バカロレアは「中等教育修了」として確立し、また、大学進学の手段として成立しているため、バカロレアは「学びの質の保証する」資格としての神話が今もなおフランス国内では成り立っている。ただ、バカロレアは一般的に高等教育を受ける際の質保証はしていないため、進学後の学業成績は種類によってさまざまである。そんな中、バカロレア自体を見直す動きが見られた。第三共和制4下の諸政府によってバカロレア廃止が検討されたのだが、主に後期高等 育機関の教員の反対に遭い実現されなかった。また、1980年代にはドバケ高等教育担当大臣が、バカロレアの上に大学入学者選抜導入を図ったが、学生の強い反対運動に遭い、その計画も潰れた。

4)社会階層の反映としてのバカロレア

 大場によると、中等教育までに社会経済的に恵まれなかった子どもは、そうでない子どもと比較して、バカロレアに至るまで様々な経済的不利益を受け、その結果、勉学への時間が削がれ、成績や合格年齢において劣ることが知られているそうだ。つまりバカロレアによって、意欲と能力があるにもかかわらず、選抜から漏れてしまう人が少なからずいることだ。この点は、機会均等や公平性の確保、或いは社会に真に貢献できる人材育成の観点等から従来から問題視されている。


フランスのバカロレアに相当する制度

 フランスのバカロレアに相当する制度は、他の国でも存在している。

・アビトゥーア(Abitur):ドイツ

・General Certificate of Education(GCE):イギリス


脚注

※ フランスでは、この後期中等教育のことをリセ(Lycée)といい、日本で言うならば高校に相当する。ちなみに前期中等教育はコレージュ(Collège)といい、日本で言うならば小6から中3までに相当する教育機関である。


参考資料

・大場淳(2005)フランスのバカロレアと高等教育の質保証に関する一考察 [1] (2008.1.28閲覧)

・世界大百科事典 平凡社

・[現代]教育学事典 労働旬報社


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