パリ協定2

出典: Jinkawiki

[地球温暖化に向けた取り組みの流れ]  まず、地球温暖化に向けた取り組みとして、1988年に国際連合環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が設けられ、事務局はスイスのジュネーブにある。やがて、国連気候変動枠組条約(1992年採択、1994年発効)の締約国により、COPという会議が毎年開催されている。1997年12月にはCOP3が京都で開かれた。ここで、採択されたのが京都議定書(2005年発効)である。京都議定書では先進国の温室効果ガスの排出量削減を目標とし、その目標を協力して達成するためにクリーン開発メカニズム(CDM)や国際排出権取引(IET)などの制度(京都メカニズム)も導入した。そして、2015年、COP21においてパリ協定が採択され、翌年発効した。


[パリ協定の概要]  パリ協定の要点は、世界的な平均気温上昇幅を2℃低くすると同時に1.5℃にまで抑えるという高い目標設定にした点と、先進国だけでなく開発途上国も温室効果ガス排出量削減のために努力する点である。京都議定書は先進国のみに削減義務が課されていたのに対し、パリ協定では各国が自ら5年ごとに目標値を設定・提出し、レビューを受けることになっている。京都議定書の評価の厳しさに対する反省から、パリ協定では柔軟性が重視されている。


[パリ協定への各国の取り組み]  環境問題への向き合い方が積極的なEU、取り組みが遅れている日本、パリ協定に参加した中国、パリ協定から離脱したアメリカというように各国の対応は様々である。各国の現状について説明する。EUは削減目標を2030年までに少なくとも-40%(1990年比)としている。2000年代中頃から、EUは再生エネルギーへの転換政策を推し進めている。その先進国ともいえるドイツが風力発電のシェアを拡大させているようにEU全体では削減目標に前向きに取り組んでいる。日本は削減目標を2030年度までに-26%(2013年度比)としている。日本はパリ協定に2016年に参加し、積極的な姿勢を示している。しかし、震災後に原発を稼働できず、火力発電に頼らざるを得ない状況もあり、CO₂削減に向けた取り組みが遅れているのも事実である。中国は削減目標を2030年度までにGDP当たりCO₂排出量-60~-65%(2005年比としている)。中国の温室効果ガス排出量は世界一位であり、中国がパリ協定に参加したことは地球温暖化防止に貢献するといえる。しかし、その目的には近年、急成長を遂げている中国がアメリカと並ぶ大国であることを示すといった意味合いも含まれる。既に、2017年に全国レベルの排出権取引制度を設け、2020年までに石炭消費比率を現状の62%以内にすること等具体的な施策を打ち出し、取り組み始めているがその実効性は結果を見極める必要がある。アメリカは削減目標を2025年までに-26~-28%(2005年比)とされ、28%削減に向けて最大限取り組むとしていた。アメリカも前大統領のオバマ政権の下では地球温暖化に対して積極的であった。しかし、パリ協定離脱を公約として掲げて、新たに大統領となったトランプ氏が正式にパリ協定からの離脱を表明した(正式な離脱は2020年)。


[グレタ・トゥンベリさんの活動の影響]  今、16歳の少女が環境問題に声を上げている。「気候のための学校ストライキ」や演説を行った。このことに対しては批判もあるが、若者が地球温暖化に対して関心を持ち始めているのは確かだといえる。


 地球温暖化による現象は人間の活動によるものか、寒冷期と温暖期を繰り返す地球のサイクルなどという自然的なものかという議論もあるが、各国はどのような対応ができるのか問われている。


[参考文献]

・「地球温暖化と社会イノベーション」 (六川修一・向井人史,2018,一般財団法人 放送大学教育振興会)

・「パリ協定で動き出す再エネ大再編―世界3大市場で伸びる事業を見極めろ」 (井熊均・瀧口信一郎,2017,日刊工業新聞社)

・朝日新聞 2019.9.26付国際面  2019.9.30付国際面

・日本経済新聞 2019.12.27付国際面


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