パン

出典: Jinkawiki

パンとは何か? さまざまな定義があると思います。トウモロコシ粉で作ったメキシコのトルティーヤや、キャッサパ粉で作ったプラジルのポン。デ·ケイジョまで含めて、パンだと考える人がいる。あるいは小麦粉を使っていても、生地を発酵させずに焼いたインドのチャパティやトルコのユフカまで含めてパンだとする人がいる。パンとは、小麦粉、酵母、水、塩をこねて、発酵させたあと、焼いたものである。これは日本パン技術研究所によるパンの定義でもあります。我々が「パン屋さんに並んでいるパン」とイメージしているものは、この定義に近いはず。この定義では、近代に日本がお手本とした西洋列強のパン、つまりヨーロッパで発達した発酵パンが想定されているのです。だから、小麦粉と表現するなかにライ麦粉も含まれます。ヨーロッパ発祥でもクレープは発酵させずに焼いたものですが、なんとなくパンのようなイメージがある。パン屋さんで売られていても連和感がない。一方、インドには、小麦粉を使って発酵させずに焼いたチャパティと、小麦粉を使って発酵させて焼いたナンがあります。最近はパン屋にもナンが並ぶようになりましたが、ピザ生地と同じで前日にこねて、冷蔵で発酵させたりしている。ヨーロッパ風ではないのですが、発酵させている点でパンと認識されているのかもしれない。パンが誕生したのは中東ですが、発酵パンが発達したのはヨーロッパです。それはなぜなのか?ヨーロッパにおいて、パンはどういう歴史を刻んできたのか? そして現在のパンを取り巻く状況は、どのようなものになっているのか? 米と麦の最大の違い 麦には小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦がありますが、すべて原産地は中東です。いま見つかっている最古の麦は、エジプトで発掘された1万7000~1万8000年前のもの。炭化した大麦です。最初は、野生の麦を採集して食べていたのでしょう。それを人類が栽培するようになったのは、1万年前だといわれています。痩せた土地や、乾燥した地域でも元気に育つし、貯蔵もきく。数ある穀物のなかでも扱いやすい存在だったはずです。しかし、麦の栽培と、パンの誕生には、まだ大きな隔たりがある。製粉と発酵の問題がクリアされていないからです。米と麦のもっとも大きな違いは、外皮の硬さにあります。麦の外皮は厚くて硬く、しかもコーヒー豆のように歴乳部分にまで入り込んでいる。非常にはがれにくいのです。米の場合、玄米の外皮は薄くて柔らかいので簡単に精米できますが、麦ではそうはいかない。米と同じように炊いて食べることはできるけれとも、外皮の部分が消化に悪い。圧力鍋で炊いて食べてみると、ものすごく胃もたれします。現代でも、外皮まで含んだ全粒粉のパンは、1日に食べられる最が限られるぐらいです。麦の外皮をどう取り除くか。それが人類の大きなテーマだったといえます。だから、麦の栽培が始まったあとも、長いあいだお粥にして食べていた(土器が発明されて、煮炊きが可能になって以後の話ですが)。現代まで粥食の習慣は残っています。外度をつけたまま麦を何時間も煮ると、歴乳がドロドロの状態になって溶け出してくる。それを粗いザルで進したり、手で搾ったりすれば、外皮を取り除くことができ、消化にいいお粥ができたはずです。当時の人類が外皮まで食べていたのか、中身の歴乳だけ食べていたのかは、化石が残っていないため分かりませんがお粥は、小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦のどれでも作れます。その土地土地で収穫できる麦が使われたはずです。中東のように乾燥していて、土壌がアルカリ性の土地では、大麦のほうが育ちやすい。しかも生育期間が短いので、収穫直前に雨にさらされる危険性が少ない。収穫量も小麦より多い。古代エジプトでも中王国ぐらいまでは、大麦が主食でした。お粥にするぶんには、麦のなかで小麦に優位性はない。古代のインドや中国でも大麦粥のほうが主流だったようです。


パンの世界~基本から最前線まで~ 著者:志賀勝栄

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