フェア・ユース・
出典: Jinkawiki
フェア・ユース
フェアユースとは、およそ『公正』と考えられる著作物の使用に対して著作権の制限を認め、これに該当するか否かを裁判所の判断にゆだねるという、1976年にアメリカ合衆国で米国著作権法第107条として認められた規定である。詳しくは、以下のものである。
第106条および第106A条の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、以下のものを含む。 1、使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む) 2、著作権のある著作物の性質 3、著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性 4、著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響 上記のすべての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合、著作物が未発行であるという事実自体は、かかる認定を妨げない。 また、連邦議会は、この制定に当たって、裁判所は、フェア・ユースとは何であるかについて、また、適用すべきいくつかの判断要素に関する広範囲にわたる制定法上の説明を超えて、個々のケースバイケースにこの法理を適用することについて自由でなければならない。107条は、裁判所上形成されたフェア・ユースの法理を成文化することを意図するものであって、いかなる意味においても、これを変更、減縮または拡大することを意図するものではないと述べている。
成立の背景
歴史的に見ると、フェア・ユースの法理は英国法を承継したものである。 世界最古の著作権法は1710年の英国におけるアン法だが、その法のもとで、1741年のジールズ判決にて「公正な要約(Fair abridgement)」は著作権者の許諾がなくとも著作権侵害ではないと判決がくだされている。これがフェア・ユース法理の起源だと言われているが、現在中心となっているフェア・ユース法については、1841年のフォルサム判決において最初に確立され、1976年の著作権法改正の際にフェア・ユースが立法化された。
日本の現状
日本では、私的複製や引用など個々の利用形態ごとに要件を定めて権利制限を認めている。このような個別規定による権利制限では、特に技術革新の激しい現在のデジタル化・ネットワーク化の時代に対応できない、という問題が生じている。そこで、現在日本では、米国での著作権ビジネスの成功はフェア・ユースによるものだという認識をもとに日本版フェア・ユースである、一定の包括的な考慮要件を定めた上で、権利制限に該当するかどうかを裁判所にゆだねる一般的制限規定を導入しようと検討している。例えば、内閣の知的財産戦略本部にて「デジタル・ネット時代における財産制度専門調査会」が設けられ「デジタル・ネット時代における知的財産制度の在り方について」が2008年11月27日に報告された。この報告を受け、知的財産戦略本部は、著作権法における権利者の利益を不当にしない一定の範囲内で公正な利益を包括的に許容しうる権利制限の一般規定(日本版フェア・ユース規定)の導入に向け規定振り等について検討を行い、必要な措置を講ずるとした。さらに、「知的財産推進計画2009」において2009年度中に結論を得て、早急に措置を講ずることを決定した。また、文化庁では、知的財産戦略本部の決定を受けて、文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会を開き、2009年5月12日以降「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入に向けて規定振り等について検討を行い、2010年4月に報告書を発表し、以下の3つの利用方法について一般規定の立法措置を提言した。 1、その著作物の利用を主たる目的としない、他の行為に伴い付随的に生ずる該当著者作物の利用であり、かつ、その利用が質的または量的に社会通念上軽微であると評価できるもの。 2、適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる不可避的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的または量的に社会通念上軽微であると評価できるもの。 3、著作物の種類及び用途並びにその利用目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用。
このように、日本の著作権法にもアメリカ流のフェア・ユース規定を導入しようと試みているのが現状である。
参考文献
山本隆司・奥邨弘司『フェア・ユースの考え方』太田出版 2010年