ヘイトスピーチ

出典: Jinkawiki

 2013年に日本で一挙に広まったヘイトスピーチという用語は、ヘイトクライムという用語とともに1980年代のアメリカで作られ、一般化した新しい用語である。1980年代前半、ニューヨークを中心にアフリカ系の人々や性的マイノリティに対する差別主義的動機による殺人事件が頻発したことから、85年にはヘイトクライムの調査を国に義務付けるヘイトクライム統計法案が作成された。これがヘイトクライムという用語のはじまりと言われている。人種、宗教、性的指向、国籍、民族性に対する偏見に基づく犯罪と定義された。また同時期に大学内で非白人や女性に対する差別事件が頻発したことに対し、各大学は差別的表現を含むハラスメント行為を規制する規則を採用するようになった。これらの規則の合憲性をめぐる論争が社会問題化し、ヘイトスピーチという言葉も広がったのである。そしてその広がりに伴って使われるようになった。ヘイトクライムもヘイトスピーチもいずれも人種、民族、性などのマイノリティに対する差別攻撃を指す。ヘイトはマイノリティに対する否定的な感情を特徴づける言葉として使われており、憎悪感情一般ではない。日本におけるヘイトスピーチは、レイシスト団体による排外主義デモだけではない。国籍、民族、社会的身分などの属性を名目として、様々なマイノリティが攻撃を受けている。朝鮮学校、新大久保、企業などでもその攻撃が見られる。また、国際人権法においてはヘイトスピーチという用語自体が新しいこともあり、条約上での定義はなされていないが、人権主義的ヘイトスピーチを規制する条約が三つある。一つは集団殺害罪の処罰及び防止に関する条約である。二つ目は人種差別撤廃条約である。三つ目の自由権規則は差別、敵意、又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。というものである。表現の自由を理由にヘイトスピーチの法規制に反対する主張は、突き詰めれば、差別的表現の自由も保持されるべきであり、被害者が我慢すべきだということになる。ヘイトスピーチは、差別構造の一部としてなされるからこそ、マイノリティの心身に極めて深刻な害悪をもたらす。

参考文献 『ヘイトスピーチとは何か』 師岡康子 2013


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