ベトナム情勢
出典: Jinkawiki
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政治
(1)1986年の第6回党大会にて採択された市場経済システムの導入と対外開放化を柱としたドイモイ(刷新)路線を継続、外資導入に向けた構造改革や国際競争力強化に取り組んでいる。他方、ドイモイの進展の裏で、貧富の差の拡大、汚職の蔓廷、官僚主義の弊害などのマイナス面も顕在化している。
(2)2011年1月には第11回共産党大会(5年ごと)が開催され、2020年までに近代工業国家に成長することを目標として引き続き高い成長を目指す方針が掲げられたほか、プロレタリアート階級主導の共産党方針は維持しつつも、私営経済活動を本業とする者の入党を試験的に認めることとされた。また、党中央指導部の人事が一新され、書記長には、これまで国会議長を務めたグエン・フー・チョン氏が選出された。
(3)2011年5月22日には国会議員選挙が行われ、その結果を受けて同年7月21日より第13期国会が召集され、グエン・シン・フン国会議長、チュオン・タン・サン国家主席が選出され、グエン・タン・ズン首相が再選された。また、政府の組織改編が承認されるとともに、ズン首相が提案した新閣僚人事案が承認され、一部閣僚が交代した。
経済
(1)1989年頃よりドイモイの成果が上がり始め、1995~96年には9%台の高い経済成長を続けた。しかし、1997年に入り、成長率の鈍化等の傾向が表面化したのに加え、アジア経済危機の影響を受け、外国直接投資が急減し、1999年の成長率は4.8%に低下した。
(2)2000年代に入り、海外直接投資も順調に増加し、2000年~2010年の平均経済成長率は7.26%と高成長を達成した。2010年は当初の目標である6.5%を上回り、6.8%成長を達成した。2011年は5.9%。しかし、急速な物価上昇、自国通貨の不安定化など、マクロ経済状況は不透明である。この状況を受けて、政府は2011年の経済運営に関し、マクロ経済の安定化とインフレ対策を最重要課題として挙げている。
(3)近年ベトナムは一層の市場経済化と国際経済への統合を推し進めており、2007年1月、WTOに正式加盟を果たしたが、慢性的な貿易赤字、未成熟な投資環境等懸念材料も残っている。
(4)最近の経済指標は以下のとおり。
GDP(経済)成長率(2011年) 5.9%
インフレ率(2011年対前年末比) 18.6%
失業率(2011年) 2.27%(都市部:34.60%、農村部:1.71%)
(不完全就業率34.34%(都市部:1.82%、農村部:3.96%))
外国投資(認可額、2011年) 147億ドル(対前年比26.1%減)
貿易収支(2011年) -98.4億ドル
輸出(2011年) 969億ドル(前年比34.2%増)
輸入(2011年) 1067億ドル(前年比25.9%増)
金融危機前後の変化
世界的な景気後退の波が、これまで順調であったベトナム経済にも大きな影響を与えた。ベトナム統計局の発表によると、2008年の実質経済成長率はその前年の8.48%から6.23%に減速した。これは97年以来の低水準であり、中国同様、近年順調な成長を遂げてきたベトナム経済も打撃を受けていることを示している。しかしながら、日本を含む多くの先進国の成長率が大幅に低下している最近の状況を考慮すると、むしろ「ベトナムは高い成長率を確保している」と見ることも出来まる。金融危機の波に呑み込まれたこの半年間で、世界中のビジネス環境は激変した。
外交
(1)基本方針は全方位外交、対外開放、地域・国際社会への統合の推進。
(2)1995年7月、ASEANに正式加盟、1998年12月には第6回ASEAN公式首脳会議を主催した。2001年、ASEAN議長国を初めて務めた。2004年10月にはASEM首脳会合を、2006年11月にはAPEC首脳会議を主催した。また、2008年1月には初めて国連安保理非常任理事国(任期2008~2009年)となった。2010年には再度ASEAN議長国を務めた。
(3)米国とは1995年7月に外交関係を樹立。1997年5月に大使交換。2000年11月にはクリントン大統領が、南北ベトナム統一(1976年7月)後、米大統領として初めて訪越。米越通商協定は2000年7月に署名され、2001年12月に批准書交換を了し発効した。2005年6月カイ首相はベトナム戦争後首相として初めて訪米した。2006年11月APEC首脳会議出席及び越政府招待による公式訪問のためブッシュ大統領が訪越した。2007年6月にはチエット国家主席がベトナム戦争後国家主席として初めて訪米した。2008年6月にはズン首相が訪米、2009年10月には訪米したキエム副首相兼外相とクリントン国務長官との間で、2010年7月には訪越したクリントン国務長官とキエム副首相兼外相との間で外相会談が実施される等、越米関係は経済面を中心に(米国はベトナムにとって最大の輸出国(2011年)近年急速に改善。越米間では、政治安全保障国防対話、人権対話等対話枠組みも比較的充実。国防面での交流も近年は年1回程度海軍艦船がベトナム寄港するなど活発化(2010年8月の米海軍艦艇のダナン寄港等)。他方、人権、宗教を巡っては依然意見の相違あり。
(4)中国とは、1979年に戦火を交えたが、1991年11月に関係正常化。2008年5月のマイン書記長訪中時の際の共同宣言では、従来の「16文字(善隣友好、全面協力、長期安定、未来志向)」と「4つの良(良き隣人、良き友人、良き同志、良きパートナー)」に則り、「包括的かつ戦略的な協力パートナー」となることに合意。最近では、2010年10月には温家宝首相がASEAN関連首脳会議のため訪越、2011年10月にはチョン書記長が訪中、2011年12月には習近平国家副主席が訪越する等良好な関係が維持されている。越中両政府は、2009年を「越中交流年」、越中外交関係樹立60周年にあたる2010年を「越中友好年」とし、数多くの交流イベントや要人往来が実施された。経済関係では、中国はベトナムにとって最大の貿易国(但しベトナムの大幅入超)であり、2011年の双方向貿易額(暫定値)は357億ドル(対前年比31%増)、貿易赤字額は135億ドル。 国境問題では、1999年末には中越陸上国境協定が締結され、2008年末、両国は陸上国境画定作業を終結させ、2009年2月には陸上国境標識敷設作業が完了した。また、2000年末にはトンキン湾海上国境画定に関する協定が調印され、現在、トンキン湾外海域の境界画定交渉が行われている。但し、南シナ海の領有権(スプラットリー諸島、パラセル諸島)を巡る問題は依然未解決。
参考文献
外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html
ふくおかフィナンシャルグループ http://www.fukuoka-fg.com/tyosa/200904/kaigai.pdf
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