ペドフィリア
出典: Jinkawiki
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ペドフィリアとは
ペドフィリア(英:paedophilia)とは 特異な性欲の一つ、幼児・小児を対象とした性愛・性的嗜好をいう。小児性犯罪者の全てがこのペドフィリアというわけではなく、実際の小児性犯罪者はペドフィリアでないことも多い。
由来
古典ギリシア文明における paidophilia(パイドピリア=少年愛)が、キリスト教的近代において否定的意味を与えられ、精神医学の用語とされた。成人による、児童・小児への持続する性的関心をもって特徴とする。 精神医学上の概念としては、精神病理に対し深い識見を備えていた、ウイーン大学教授教授リヒャルト・フォン・クラフト=エビング(Richard von Krafft-Ebing,1840年 - 1902年)が、著書『Psychopathia Sexualis(性的精神病理,1886年)』において最初に提唱したとされる。ラテン語より派生した形として、paedophilia とも表記する。その後、異常心理学では、「性の異常心理」として「性対象異常」の下位範疇において児童・小児を性愛の対象とする性倒錯として位置付けられた。20世紀半ばまで、精神医学においても性倒錯として把握されたが、今日の精神医学においては、性嗜好障害とされる。
小児性犯罪者
子供への性的虐待の犯人は医学的診断にかかわらず一般社会から小児性愛症者であるとみなされ、そしてそういうものとして言及される。近年の精神医学診断は疾病の原因には言及しない傾向にある。しかし社会一般では逆に、犯罪の動機・原因に強い関心を持って語られることが多い。
社会一般では、犯罪の動機が”子供に限定された強い性的興味”にあると信じられている場合が多い。しかしながら、ストレス、結婚の問題、成人パートナーと接触不能など他の動機がある可能性がある。犯人の大部分は、実際には子供に主に興味があるわけではないとの説もある。
子供への性的虐待は必ずしも(粗暴なという意味での)暴力を伴うものではなくむしろ少数とも言われる。しかしながら、(粗暴な)暴力を伴う性的虐待の例では重篤な被害をもたらす場合が多く、それまで(粗暴な)暴力的手段を用いなかった小児性犯罪者が今後も(粗暴な)暴力的手段を用いない保証はない。
また、小児性犯罪は表に出ない暗数が多いとされる。小児性犯罪者は明るみに出るまで犯罪を繰り返す傾向が強く一人当たりの犯罪数が多い。
割合
幼児・小児に対し性的興味・嗜好を持つ人の割合に関していくつかの研究や調査報告がある。
(ただし、幼児・小児に対する性的興味・嗜好がただちに、小児性愛(またはその傾向)を意味するわけではない。以下の報告は、精神医学上の小児性愛者(pedophile)ではなく、広義のペドフィリア「小児への性的嗜好」に関する調査報告である)。
日本では唯一NHKによる調査が存在する「日本人の性行動・性意識」(2002年:ISBN 4140092947)では13歳未満の相手とのセックスについて、「してみたい」と積極的肯定回答した男性は、10代(16-19歳)6%、20代5%、30代4%、40代1%、50代8%、60代0%であった。他方、女性においては、積極的肯定回答はすべての層でほぼゼロに近く、消極的肯定回答も10代に2%が見られるのみである。 選択肢には、他に「どちらかといえばしてみたい」 「どちらかといえばしたくない」 「したくない」「実際にしたことがある」があった。また質問に対し「無回答」もあった。 これらについて、10代-40代では「どちらかといえばしてみたい」の消極的肯定も、積極的肯定とほぼ同数かそれ以上あった。「無回答」は30代以下では1割以下だが、年齢と共に大きく増加し、60代では半数に迫った。「無回答」の比率は、各年代とも男女間に大きな差は見られない。 アメリカ合衆国におけるキンゼイ報告(1975年)での調査及び、他の研究(Freund & Costell 1970, Hall et al. 1995)が示す数字では, 成人男性の少なくとも25%が小児に対し性的魅力を感じていると述べている。 カルフォルニア大学ロサンゼルス校心理学部ポール=オーカミによれば 性欲の第一の対象が思春期前の子どもだというアメリカ人の割合は1%前後だという。 ただし「小児性愛者」の意味は法令や心理学者の判断、記者の偏見によって左右されるため、 人口に占める小児性愛者の割合は1%・5%・21%・50%、いずれも正しいという。
警察庁の調べでは、2005年の1月から11月までの小学生の犯罪被害件数は、強姦41件、強制猥褻1110件、公然猥褻112件である。 (ただし、犯罪記録は直接小児性愛者の数とは結びつかない)
ペドフィリア(小児性愛)が異常あるいは精神障害(Mental Disorder)かどうかについては、議論の余地がある。かつて APA の精神障害診断基準 DSM から「同性愛」を外すことに尽力したリチャード・グリーン(Richard Green)等は、小児性愛感情を持つ一般人は、20-25%存在し、小児性愛的刺激物への反応率は 27.7% と、広範に存在することから、ペドフィリアを DSM より取り除くことを主張している(『Archives of Sexual Behavior』 Vol. 31, No. 6 2002年) 註:最近の精神医学では、平均との「乖離性」よりも、その「適応性」(主体の孤立・苦悩・経済的破綻)や「価値的基準」(社会規範の遵守等)を重視する傾向がある。そのため、小児性愛(pedophilia)を医学上正常の範疇とする考えは少数派に留まる。この(「乖離性」より「適応性」や「価値的基準」を重視する)観点から近年「同性愛」は、性嗜好障害から除外された。
日本の認識
日本では以前はペドフィリア嗜好に対する認識がほとんど無く、子供に対する性的行為は性犯罪者などが行う異常行為、といった認識であった。また児童に対するわいせつ事件についても、よほど悪質か異常な物を除いて「いたずら」と呼称するなど軽視される傾向が強かった。児童の裸体や性器露出についてもわいせつ物としての認識が無く、いわゆる少女ヌード写真集が堂々と一般書店で発売されていた。
こうした状況を激変させたのが、1988年~1989年に発生した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件である。この事件によってペドフィリア嗜好を持つ人間が一般社会に潜んでいる実態が世に知れる事となり、児童を対象にした性犯罪への警戒や児童ポルノの規制の強化、更に通常のメディアでも児童の裸体・下着露出の自主規制などが行われる事となった。こうした経緯から、日本ではペドフィリアに対して極めてネガティブな風潮が強く、現在はほとんどが否定ばかりで、その原因や存在をとらえようと前向きに研究をしたりすることは少ない。
ただし、精神鑑定では東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人はペドフィリアの典型ではなく、他の異常性格・性嗜好障害傾向が優勢だとされる。また、成人女性の代わりとして幼女を狙ったとされている。例えば、彼の幼馴染は「日本人より外人の方がスタイルがいいから、いいよな」と彼が述べていたことを証言している。なお、実際の精神鑑定で医学的なペドフィリア的傾向があるとみなされた例としては奈良小1女児殺害事件の犯人がいる。
参考引用文献