ボーイスカウト

出典: Jinkawiki

ボーイスカウトとは、世界162の国と地域、約3600万人が加盟する世界最大の青少年運動である。仲間とともに、キャンプなどを中心とした自然の中での“遊び”を通して様々なことを身につけ、より良き社会人を目指すことを目的とする。

目次

ボーイスカウトの始まり

ボーイスカウトの祖、ベーデン・パウエルは1907年7月29日~8月9日、英国南部のブラウンシ―島に子どもたちを集め、実験キャンプを行った。ベーデン・パウエルは集まった20人の少年たちを4つのパトロール(班)に分け、それぞれのパトロールを「しぎ」「からす」「狼」「雄牛」と名付けた。各パトロールはそれぞれの動物の絵を描いた旗と、パトロールごとに色の違う肩飾りが支給された。帽子には百合の花のバッジをつけた。(このバッジに修飾が施されたものが後にスカウトバッジとなっている。)これが世界で初めてのボーイスカウトキャンプであり、後にグループワークとして体系化される青少年の小集団活動の始まりであった。翌年、ベーデン・パウエルはスカウティング・フォア・ボーイズ(SFB)という本を出版した。SFBはスカウトの技能に関する10章と、28の「キャンプファイヤー夜話」からなる。語り口は平易で少年にも十分理解できる。この本によって、スカウト活動は急速に波及した。


特徴的なシステム

パトロール・システム…パトロール・システムは日本では「班制度」と訳されている。ボーイスカウトは6~8人で構成されるパトロールが基本活動の単位である。パトロール・リーダー(班長)はスカウトの中から選ばれる。いくつかのパトロール(通常4つ)が集まってトループ(隊)をつくる。トループのリーダーがスカウト・マスター(隊長)で、ここで初めて大人が登場する。年齢別に作られた五つの隊(ビーバー隊、カブ隊、ボーイ隊、シニア隊、ローバー隊)をもってスカウト・グループ(団)を結成し、この団が地域レベルの基本単位となる。

バッジ・システム…バッジ(記章)は、スカウトの進歩や個人の技能に対して与えられるもので、スカウト全般における進歩記章と、個人の趣味や技能など特定の課目に対して与えられる記章の二種類がある。スカウトの進歩記章は初版のSFBでは二級スカウトと一級スカウトの区分しかなかったが、1911年に初級スカウトが付け加えられた。初級スカウトはいわば見習いであり、基本的な三つの項目をパスしなければスカウトのちかいを立てることはできない。


エピソード

イギリス発祥のボーイスカウトが本格的にアメリカにもたらされたのは1910年だが、それに際してあるエピソードがある。

シカゴの出版者であるウィリアム・ボイスが1909年に訪英したとき、ロンドンで道に迷ってしまった。制服を着た少年に道を聞いたところ、その少年はボイスを目当ての住所まで案内してくれた。ボイスがお礼にとチップを差し出したところ、少年は「ボーイスカウトはお金は受け取らない」と告げて名前も言わずに立ち去ってしまった。ボイスはこの少年が言った「ボーイスカウト」という言葉に興味を持ち、ボーイスカウトの本やバッジ、制服の見本をアメリカに持ち帰った。そして1910年、ボーイスカウツ・オブ・アメリカ(アメリカボーイスカウト連盟)の名称をワシントンDCに登録した。


ボーイスカウトと戦争

ボーイスカウトのヒントとなる組織は、1899年、イギリスとトランスバール共和国・オレンジ共和国の間で起きた戦争のさなかに結成された。それは、9歳以上の青少年に、軍事情報の伝達・郵便物の配達・見張り役などをさせたもので、「見習兵団」と呼ばれた。その少年たちが嬉々として任務にあたる姿から、ベーデン・パウエルはスカウト活動のヒントを得たのだ。また、SFBが出版され、ボーイスカウトが成立したのちにも戦争はあった。第一次世界大戦の際にはベーデン・パウエルの通達した例示に従い、見習兵団のような活動に加え、病院での手助けや人々の救助など、様々な戦時奉仕を行っている。成立したころのスカウト活動は、現在よりも軍事色の強いものであったことがうかがえる。

現在ではそのような活動は基本的に行っていない。特に日本では、街頭などでユニセフ募金への協力をお願いしていたり、道路のゴミ拾いをしていたりと、慈善活動に取り組んでいる姿をよく見かける。とはいえ、制服や敬礼が決められていたり、ちかいやおきてがあったりと、根本的な部分の軍事色は残っており、家族や友人にスカウトがいなければなかなか近づきがたいのが現状である。


世界とスカウト

ボーイスカウトでは、世界スカウトジャンボリーと呼ばれるイベントが4年に一度開催される。これは世界中のスカウトが一堂に会し10泊前後のキャンプを行うもので、スカウトにとっての国際交流の場である。2015年で23回を迎えた。

 100年も前に始まった活動が、今でも世界中で受け入れられているのは驚くべきことだ。その上、様々な国の様々な考えを持った人が、「スカウトである」という理由だけで集まってキャンプができる。さらに、指導者である大人たちは基本的に無償で活動しているボランティアだ。少年少女を惹きつける活動と、大人ですらその活動を通して得られるものが多いことが、この不思議な活動を支え、世界で愛されるものとしているのだろう。こうした各国国民の平和的な活動と交流が、次代を担う子供たちを成長させ、平和な世界への力になることを願いたい。


参考

「ボーイスカウト」 田中治彦/著 中央公論社

公益財団法人 ボーイスカウト日本連盟 http://www.scout.or.jp/

世界スカウトジャンボリー http://www.23wsj.jp/index_j.html


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