ポピュリズム普及の理由

出典: Jinkawiki

目次

概要

ポピュリズムは21世紀における流行の政治用語のひとつである。ラテンアメリカの左翼系大統領やヨーロッパの主流派に挑む右翼系政党を表するのにつかわれるほか、トランプ米大統領誕生など「大衆迎合主義」とも訳される。


理由1

冷戦の終結と左右対立の変容

かつての政治はどこの国においても右対左という形で争われたが、それは冷戦構造を反映していた。しかし、1990年前後の冷戦構造の終焉、社会主義諸国の崩壊により、まず左派の側で社会主義理念を再考せざるを得なくなる。

左派の弱体化は、右派にとってもアイデンティティの危機をもたらすことになった。実は日本を含め、多くの先進国における保守政党の一つの重要な指令が「左派や社会主義政党に政権を渡すな」ということだったからである。つまり、自由主義的なものから保守主義的なものまでさまざまな流れの混在する保守政党は、左翼政党に政権を渡すくらいならお互いに妥協し合う方がましだというロジックのもとでかろうじてまとまってきた。


理由2

既成政党や既成団体の弱体化

既存の政党やそれを支える組織は今やいずれも弱体しており、多くの人が既成の政党や団体にそっぽを向いているという傾向がみられる。日本にせよ、イタリアにせよ、保守政党の危機あるいは下野は、冷戦構造の崩壊と左派の再定義が行われた後に起きている。日本において90年代になってはじめて自民党は下野した。イタリアにおいても、キリスト教民主党(DC)という政党―日本の自民党と非常によく似た一党支配政党―がまた、左翼に政権を渡すことを防ぐという意味での存在価値が失われ、汚職が摘発されると一気に世論が背を向けたことから、政党そのものが消滅するに至った。もはや、右あるいは左という何らかの核があるということ自体が、何ら政党としての安定的な存続を保証するものではなくなったわけだ。


理由3

産業構造の転換とグローバル化

ヨーロッパでは移民の増加や国境を越えた統合の進展といった構造変化が起きた。この変化は旧来の工業労働者層、あるいは貧困層に対してより厳しく作用された。この結果、彼らは「既存の政党は自分たちを守ってくれない」と反発し、そこでポピュリスト政党の主張に魅力を感じてしまうことが生じてしまうわけだ。


参考文献

カス・ミュデ、クリストバル・ロビ、ラ・カルトワッセル 著 永井大輔、髙山裕二 『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』 白水社

水島治郎 著 『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』 中公新書

ヤン=ヴェルナー・ミュラー 著 板橋拓己 訳 『ポピュリズムとは何か』 岩波書店

倉沢章夫 編 『ポピュリズム政治にどう向き合うかーメディアの在り方を考えるー』 公益財団法人 新聞通信調査会


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