ミッキーマウス保護法

出典: Jinkawiki

 「ミッキーマウス保護法」、または「ミッキーマウス延命法」とは、1998年に制定されたアメリカ合衆国の著作権延長法を揶揄する俗称。

目次

概要

 ミッキーマウスの最初の短編映画である「蒸気船ウィリー」が公開されたのは1928年のことであった。その当時のアメリカでの著作権法による著作権の保護期間は56年であったため、著作権は1984年で切れるはずだった。しかし、その保護が切れる寸前、1976年に著作権法は改正され、保護期間は75年になった。この法律はその時点で保護されていた著作物に対しても適応されたため、ミッキーマウスは2003年まで保護の対象になった。そして、1998年に制定された著作権延長法によって、ミッキーマウスの保護は2023年までのびることになった。

 ミッキーマウスや1920年代に発表された作品の著作権が切れそうになるたびに著作権の保護期間が延長されてきた。これがアメリカの著作権法がミッキーマウス保護法と呼ばれるようになった由縁である。

著作権変更の歴史

 著作権の保護期間は、125年以上の長きにわたって変更が繰り返されてきた。まず1790年にアメリカで初めて著作権法が登場したとき、著作権の保護期間は14年と制定されていた。そして、著者が生存している場合に限り、さらに更新期間として14年を追加申請することができた。著作権の適用範囲は地図・図表・本に限定されており、現代とは異なり著作物を保護するには著作権登録が必須とされていた。もしこれらの著作権に関する手続きを行わなかった場合、すべての作品がパブリックドメイン(著作権や商標権が消滅、または放棄された状態)として扱われることになっていた。

 1831年になると、14年の著作権保護期間は28年になり、更新期間の14年を合わせて最大42年に変更された。1909年の著作権法では28年の保護期間に加えて更新期間が28年であるため、最大56年となり、徐々に著作権の保護期間が拡大されていった。

 ミッキーマウスが初めて登場したのは、1928年に公開された「蒸気船ウィリー」であったため、1909年の著作権法では保護期間は1984年で失効となるはずであった。ミッキーマウスの著作権の失効が差し迫ったディズニーは、著作権法の変更を求めるロビー活動を行ったといわれている。その後、1976年にアメリカ議会が著作権保護制度の大幅な見直しを決定し、ディズニーを拡張保護対象として認定した。それまでの「作品発表から56年間」の代わりにヨーロッパの基準である「著者の死後50年間」が適用されるようになった。それに伴い、1976年の著作権法の保護期間が適用されていた作品であっても、企業作品であれば遡及延長が認められるようになった。すでに公開されている作品の著作権の最大保護期間は75年となり、ミッキーマウスは2003年まで保護の対象となった。そして、1922年以降の著作権物に対しては、著作権保護の手続きをしなくても、自動的に著作権法のもとで保護されるようになった。

 その後、2003年のミッキーマウスのパブリックドメイン化が近づいたころ、1998年アメリカ議会は著作権延長法を制定した。これが「ミッキーマウス延命法」、または「ミッキーマウス保護法」と言われる。著作権の保護期間は原則として「著者の死後70年」となり、法人著者の場合は「発行後95年間」または「制作後120年間」のどちらか短い方と適用された。これによりミッキーマウスは2023年まで著作権によって保護されることになった。

影響

 著作権保護期間の延長に関して、著作権法の成り立ちにディズニーが大きくかかわっているが、この延長申請を行っているのはディズニーだけではなく、その他の映画会社などが積極的に延長申請を行っている。

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、アメリカが求める著作権保護期間の延長措置が、電子書籍や映画の廉価版DVD販売などの「パブリックドメイン作品」を活用するビジネスにダメージを与えかねないと報じられている。日本では現在、著作者の死後50年、映画は公表後70年の著作権保護期間が設定されているが、アメリカ側は日本にもアメリカの著作権保護期間と同様の基準を求めていることから、このような報道がなされている。

参考文献

Goraiasu


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