ヨハネ福音書
出典: Jinkawiki
新約聖書中の一書で、『マタイによる福音書』、『マルコによる福音書』、『ルカによる福音書』に次ぐ4つの福音書(イエス・キリストの言行録)の一つである。ルターは本福音書とパウロ書簡を極めて高く評価しており、その影響は現在のプロテスタント各派に及んでいる。「第四福音書」に位置づけられる『ヨハネ福音書』は「共観福音書」と呼ばれる他の3つとは内容的に一線を画した内容となっている。この福音書が4つの中で最後に書かれたということに関して研究者たちの意見は一致している。初代教会以来、伝統的にはこの『ヨハネによる福音書』(以下『ヨハネ福音書』)の筆者は、文書中にみえる「イエスの愛しておられた弟子」すなわち使徒ヨハネであるとされてきたが、現代の聖書学者でこの考え方を支持するものはいない。成立時期については、最古の写本断片が120年頃のものとの鑑定から一世紀末という見解が多数であったが、特に近年、この鑑定に対する疑問が提示され再検討がなされている。
福音書の内容
初めに、ことばがあった、ことばは神とともにあった。ことばは神であった。ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに満ちておられた。私はそれを見たのです。それで、この方が神の子であると証言しているのです。
神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。神が御子を世に遣わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである。
まことに、まことに、あなたがたに告げます。わたしのことばを聞いて、わたしを遣わした方を信じる者は、永遠のいのちを持ち、裁きにあうことがなく、死からいのちに移っているのです。
イエスは言われた、わたしがいのちのパンです。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません。まことに、まことに、あなたがたに告げます。信じる者は永遠のいのちを持ちます。
イエスはまた彼らに語って言われた。わたしは世の光です。わたしに従う者は、決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持つのです。そして、あなた方は真理を知り、真理はあなたがたを自由にします。
わたしは良い牧者です。良い牧者は羊のためにいのちを捨てます。わたしの羊はわたしの声を聞き分けます。またわたしは彼らを知っています。そして彼らはわたしについてきます。わたしは彼らに永遠のいのちを与えます。彼らは決して滅びることがなく、また、だれもわたしの手から彼らを奪い去るようなことはありません。わたしに彼らをお与えになった父は、すべてに勝って偉大です。だれもわたしの父の手から彼らを奪い去ることはできません。わたしと父は一つです。
終わりに
近年の聖書研究の動向では、『ヨハネ福音書』の冒頭部分をユダヤ文化の伝統に即したものとして考えるのが主流になっている。つまり創世記の冒頭が神による世界の創造だけを述べているように、『ヨハネ福音書』の冒頭はことばについてだけ述べているということである。『ヨハネ福音書』ではロゴスとはイエスのことである。創造とロゴスを対比してみることで、パウロも語っているようなアダムとイエスの対比が明確になってくる。パウロは『コリントの信徒への手紙一』15:45において、第一のアダムが「生きるもの」となったように、第二のアダムであるキリストが「霊をあたえるもの」になったという。