ワークシェアリング

出典: Jinkawiki

目次

ワークシェアリング

ワークシェアリングとは、一つの仕事を多数で分け合うという考え方や政策のことである。雇用人数はそのままで、労働時間を減らして賃金をカットすることによって、リストラを回避するための手段にもなる。

世界では、ドイツやオランダ、フランスなどでは早くから導入し、すでに失業率低下の効果が出ている地域もある。

日本では厚生労働省や日経連を中心として話し合い、2002年に「ワークシェアリングについての基本的な考え方」について合意した。



分類

ワークシェアリングは、以下の六類型にまとめられる。

週当たり労働時間の短縮による雇用創出 ジョブシェアリング 早期退職措置としてのパートタイム化 自発的パートタイム化 連続有給休暇時の代替要員 キャリア・ブレーク時の代替要員


また内閣府によれば、以下二つのタイプがある。

(雇用維持型) 不況などで企業の業績が悪化した際に、一人当たりの労働時間を減らすことによって企業全体での雇用を維持する。典型例にドイツがある。

(雇用創出型) 様々な業務ごとの短時間労働を組み合わせることによって、雇用機会を増やす。典型例にオランダがある。80年代前半の失業率12%は、2001年には3%を下回るまで低下している。



効果

雇用機会に対しては、ワークシェアリングを導入することによって、雇用は増加する傾向があるという分析がある。また、経済活性化に対しても、ワークシェアリングだけでなく、資源配分の改善、生産性の向上も必要であるという。

企業にとっては、従業員の頭数が増えるため、社会保障費、従業員訓練にかかるコストが増加する。

労働者にとっては、余暇が増えることにより自己研鑽等ができ、また余暇の増加に伴い消費が活性化することが考えられる。



海外での導入

(イギリス)

イギリスでは1977年に失業者の追加雇用を目的とした早期退職制度、1979年には生産活動の停滞により発生した短時間労働者を対象とした操業短縮保障制度が導入された。1987年にはフルタイム労働を分割してパートタイムを増加させることを目的とした作業分割制度が導入されている。


(オランダ)

オランダのワークシェアリングとしては、ワッセナー合意(1982年)が有名である。雇用創出型が基本[。

政労使の合意として

労働組合は賃上げの抑制に努める 経営者は雇用の維持と時短につとめる 政府は減税と社会保障負担の削減、財政支出の抑制につとめる。また企業投資の活性化による雇用の増加を促進する。 というものである。

労働時間は、合意前の1979年は年間約1600時間あったが、1999年には1400時間を割るまでに減少している。分野ではサービス業で、雇用の増加(パートタイマーの増加。特に女性)が起きた。


ワッセナー合意以降、パートタイマーの比率が83年の18.5%から2001年には33.0%に上昇し、失業率は2001年には2.4%まで下落、実質GDPの伸び率も2~4の安定成長を実現した。他方では生産性上昇率の伸び率が低く、物価は上昇傾向にある。このため生産性の改善が課題となっている。


(ドイツ)

ドイツのワークシェアリングは、当初は産業別あるいは業種別に労使協約によって自主的におこなった。背景には、企業業績悪化による失業者の発生を抑制する目的があった。

政策としては、2001年のパートタイム労働及び有期労働契約法がある。この法律は、同一労働同一賃金や、パートへの差別を禁止している。





日本

日本においても不況のおりにワークシェアリングがとりあげられてきた。導入には、サービス残業の抑制による労働時間の観念の明確化、フルタイムとパートタイムの差別の禁止、業務領域の明確化が課題となると指摘する声もあった。2009年1月現在、厳しい経済状況の中で、雇用者を守る目的や、新たに雇用機会を設ける目的でワークシェアリングが導入されはじめている。





経済悪化とワークシェアリング

2009年1月現在、世界中で経済状況が厳しい状態にある中、国内においてあらたにワークシェアリングが導入されている事例を以下にとりあげる。


●自動車会社のマツダは、定年退職後に再雇用した社員を対象に、ワークシェアリングを導入する方針であることが2009年1月17日、分かった。労働組合との合意を経た上で、早ければ2月から段階的に実施する予定だ。(時事通信) 


●大阪府の橋下徹知事は2009年1月16日、府市長会総会で、雇用確保策の一環として、ワークシェアリングを導入し、400人を臨時採用する意向を表明した。橋下知事は「民間に雇用確保を求める以上、自治体が範を示す必要がある」と述べた。 (時事通信)



ワークシェアリングの取り組みに関する5原則

政府、日本経営者団体連盟及び日本労働組合総連合会は、平成14年3月29日に「ワークシェアリングの取り組みに関する5原則」を含む「ワークシェアリングについての基本的な考え方」について合意した。5原則は以下のとおりである。


1. ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的として労働時間の短縮を行うものである。我が国の現状においては、多様就業型ワークシェアリングの環境整備に早期に取り組むことが適当であり、また、現下の厳しい雇用情勢に対応した当面の措置として緊急対応型ワークシェアリングに緊急に取り組むことが選択肢の一つである。

2. ワークシェアリングについては、個々の企業において実施する場合は、労使の自主的な判断と合意により行われるべきものであり、労使は、生産性の維持・向上に努めつつ、具体的な実施方法等について十分協議を尽くすことが必要である。

3. 政府、日本経営者団体連盟及び日本労働組合総連合会は、多様就業型ワークシェアリングの推進が働き方やライフスタイルの見直しにつながる重要な契機となるとの認識の下、そのための環境づくりに積極的に取り組んでいくものとする。

4. 多様就業型ワークシェアリングの推進に際しては、労使は、働き方に見合った公正な処遇、賃金・人事制度の検討・見直し等多様な働き方の環境整備に努める。

5. 緊急対応型ワークシェアリングの実施に際しては、経営者は、雇用の維持に努め、労働者は、所定労働時間の短縮にそれに伴う収入の取り扱いについて柔軟に対応するよう努める。

yamashinmorio

参考文献

「ワークシェアリングについての基本的な考え方」

時事通信

毎日新聞

新版現代社会 実教出版株式会社 2006

ja.wikipedia.org/wiki

http://www.hiroroudoukyoku.go.jp/04/worksharing.html


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成