一人っ子政策
出典: Jinkawiki
一人っ子政策とは、人口規制政策のことを指す。公式には計画生育と呼ぶ。
一人っ子政策は、人口の自然増加率を1%以下にすることを目標に、1979年以来中国が採用している政策のことであり、この政策は夫婦の子を一人に厳重に制限するものである。また、一人っ子政策は、内容を一律にそろえたものではなく、それぞれの地域によって内容が異なる。
一人っ子政策による弊害
まず挙げられるのが黒孩子(ヘイハイズ)の出現である(闇っ子)。黒孩子は計画出産の枠外の二人目、三人目のヤミ出産の子供で、戸籍に登録してもらえない子供たちのことである。中国の戸籍制度は、食糧などの配給制度や、義務教育、福利厚生を受ける権利とも密接にかかわっているため、黒孩子たちは学校教育を受けることができないといったような厳しい状況に置かれている。
また、男尊女卑の思想と労働力という観点からの人口の男女比の問題や、女児への間引きや虐待などの問題も存在する。中国では伝統的な男尊女卑思想の存在や、農村での労働力となる男子を欲するという傾向から出産前の胎児性別検査を行い、胎児が女子の場合は中絶手術を行うというケースが多発している。このため、人口の男女比率がアンバランスになるといった現象が起きている。また、上記のような状況(男尊女卑の思想・労働力としての問題など)から、女児に対する間引きや虐待という事件が80年代半ばまでの中国の地方紙では頻繁に取り上げられていた。広東省では女児の溺死を禁止するといったような条項を盛り込んだ婦女子の保護に関する省条例が作られたりした。つまり省条例を作らなければならないほどにこういった問題が起きていたと推測される。その後、徐々にこうした事件の報告はほとんどの地方紙から消えていったが、これは海外からの人権攻勢をかわすため、ことさら残虐な女児殺しなどの報道を制限したことなどが影響しているのであり、事件そのものがなくなったということを意味するものではないことを理解する必要がある。
さらに、両親二人と祖父母四人に溺愛されるという言う意味の「四、二、一っ子」や「小皇帝」と呼ばれる一人っ子たちの問題も表れてきているようである。専門家たちは彼らを知力では優れているが、過保護でひ弱な傾向が見えていると警告している。また、かつての憧れの的であった人民解放軍の徴兵難の理由に、親たちが大切な一人っ子のわが子を危険な軍隊には入れたくないと考えているためであるとする考えも出てきている。
一人っ子政策の例外
一人っ子政策は、上記したとおり人口の過度な増加を抑えるための政策ではあるが、決して「いかなる状況下でも子供は一人しか産んではいけないというものではない」という政策ではない。中国では、「1組の夫婦に子供一人というのは段階的な措置で、今後の人口増加と経済の発展状況によっては次第に調整されるものである」と考えられている。そして、罰則を受けずに二人目を産むことができる例外も存在している。 たとえば上海市では当初、次のような条件が満たされていれば二人目を産むことも許可されていた。
①一人目の子供が非遺伝性の疾患で標準的な働き手に成長するのが困難な場合
②結婚5年後、子供ができないために養子をもらったが、その後に妊娠した場合
③夫婦双方とも一人っ子の場合
このほか農村部では、夫婦一方に障害があって働けない場合や、兄弟で一人しか生育能力がない場合なども「労働確保」という観点から二人目が認められることになっているという。
しかし、人口増加のピッチが依然として高い状態であったため、90年に定められた上海市の計画出産条例では「二人目」を認める条件はさらに狭められ、違反した場合の罰則制度が厳しくなった。二人っ子の特例は、再婚夫婦で一人しか子供がいない場合や、都市部に住む少数民族と海外から戻って定住する帰国華僑の家庭だけに認められることとなった。違反して二人目を産んだ夫婦への罰金は、出産前の2年間の夫婦の平均年収の三倍という高額である。これを6年以内に収めねばならないこととなった。
上に記したような都市と農村などの地域では暮らしの状況が異なるため、政府では一人っ子政策を全国一律に機械的に実施しているのではなく、地域の事情に応じた条例作りが進められている。そのため、例外となる条件は地域ごとに異なってくるといってよいだろう。
引用文献
Wkipedia [1]
新村出(編) 2008 広辞苑第六版 岩波書店
加藤千洋 1991 岩波ブックレットNO.213 中国の「一人っ子政策」 岩波書店
[ハンドル名:あんこ]