一遍上人絵伝
出典: Jinkawiki
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概要
時宗の開祖である一遍上人の伝記を描いた絵巻。一遍の伝記絵は、没後まもなく制作され始めたが、時宗教団の発展に伴い、数多くの絵巻がつくられた。これを大別とすると聖戒編「一遍聖絵」と宗俊編「遊行上人縁起絵巻」の系譜に分けることができる。歓喜光寺に伝わった「一遍聖絵」は、一遍の没後10年目にあたる正安元年につくられた12巻本の絵巻。奥書から、一遍の側近くに仕えた弟子の聖戒が詞書を編集し、法眼円伊が絵を描いたことが分かる。円伊については、絵師円伊説、園城寺僧円伊説などがあるが詳細は不明。伝統的な大和絵の山水表現や季節の表現をベースに、宋画の新しい技法を加え、さらに、既成の社寺曼陀羅の枠組みを借りて、一遍が訪れた各地の名所や寺社の景観を大きく描く。「遊行上人縁起絵巻」が時宗教団の布教を目的とするため、時宗教団や一遍の奇跡を強調しているのに対し、「一遍聖絵」は、詞書では人間一遍の側面を伝え、絵では名所や寺社の景観のなかに一遍を小さく描いている。絹本であることや、諸国の一宮を比較的多く描いていることなどから、蒙古襲来を契機に、貴顕の依頼によって制作されたと考えられている。ちなみに、絹本着色で国宝である。
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参考文献
「一遍聖絵」の制作背景に関する一考察 著:水野僚子
日本中世史事典 編集:阿部猛 佐藤和彦
日本史B用語集 編集:全国歴史教育研究協議会 山川出版社