人格障害

出典: Jinkawiki

人格障害とは、その人が持っている「人格」が常道から外れてしまって、社会生活に障害を来すものをいう。青年期や成人期早期に始まることが多く、長期にわたってその人格が安定していて、苦痛を伴う。この中でその障害が他の精神障害に原因がないものを一般的に人格障害という。


人格障害の種類

最も新しい精神医学の診断基準である、米国精神医学会が定めたDSM-Ⅳでは、人格障害を大きく、A,B,Cの三グループに分け、さらに十のタイプに分類している。

A群は、オッド・タイプ(風変わりなタイプ)とも呼ばれ、非現実的な思考に囚われやすいグループである。遺伝的に分裂病気質を持っていることが多く、自閉的で妄想を持ちやすく、奇妙で風変わりな傾向があり、対人関係が上手くいかないことがある。遺伝的な素因としては、統合失調症や妄想性障害と共通すると考えられている。このグループに分類されるのは「妄想性人格障害」「統合失調質人格障害」「統合失調症型人格障害」の3つ。

B群は、ドラマチック・タイプとも呼ばれ、人目を惹きつける華やかさや、衝動性を特徴とし、自己顕示性や対人操作性が強く、また気分の変動も伴いやすいグループである。もっとも「人格障害」的な人格障害といえる。成因としては、遺伝的な因子の関与も否定できないが、養育環境の影響が多いと考えられている。愛情や保護の不足によって、自己愛の傷つきを生み、基本的な信頼感が失われているため、変動の多い対人関係を持つことになりやすい。このグループに分類されるのは「境界性人格障害」「反社会性人格障害」「自己愛性人格障害」「演技性人格障害」の4つ。

C群は、アンクシャス・タイプ(不安の強いタイプ)とも呼ばれ、障害のレベルとしては、もっとも軽いもので、神経質な傾向はあるが、穏やかで、一見、余り「人格障害」的でないグループである。成因としては、養育者側の過保護や過度な支配、否定的な態度によって、主体性や自尊心が十分に育まれなかったことや、いじめを受けたり、失敗して恥をかくような体験、不安を感じやすい遺伝的素因などの関与が考えられる。このグループに分類されるのは「回避性人格障害」「強迫性人格障害」「依存性人格障害」の3つ。

人格障害にはさまざまなタイプがある。どんな特性も長所となれば短所ともなる。それが短所となるのは、ほどよさを欠いているためである。 妄想性人格障害の人は、極度に疑り深いために、妻も友人も信用できない。常に裏切るのではないかと疑ってしまう。 依存性人格障害の人は、すぐに人を信じてしまう。とても騙されやすく、ときには、遊び人の甘い言葉を信じて、体を売ってまで貢いでしまったりする。 自己愛性人格障害の人は、自分に過剰ともいえる自信を持ち、華々しい成功を夢見ている。 境界性人格障害の人は、自分は無価値だと思い、できれば消し去りたいと思っている。 回避性人格障害の人は、攻撃や傷つけられることに敏感で、不安や葛藤を極力避けようとする。 反社会性人格障害の人は、不安を感じにくく、血沸き肉躍るような闘争状態や緊張した状態を、むしろ心地よく感じる。そのため、危険な犯罪行為に走りやすい。

というように、一つの特性は極端になることで、有害な影響を自分自身にも周囲にももたらすのである。「わがまま」や「頑固」な性格ということで、周囲が大目に見て、我慢していることも少なくないが、医学的にみると、立派な人格障害だったということもあるのだ。


多重人格障害

現在は“解離性同一性障害”と呼ばれ、虐待などの強い心的外傷から逃れようとした結果、解離により個人の同一性が損なわれる疾患である。明確に独立した性格、記憶、属性を持つ複数の人格が1人の人間に現れるという症状を持つ。

人間は(特に幼児期に)、繰り返し強い心的外傷を受けた場合、自我を守るために、その心的外傷が自分とは違う「別のだれか」に起こったことだとして記憶や意識、知覚などを高度に解離してしまうことがある。心的外傷を受けるたびに「別のだれか」になり代わり、それが終わると「元の自分」に戻って日常生活を続けるのである。解離が進み、「別のだれか」になっている間の記憶や意識の喪失が顕著になり、あたかも「別のだれか」が一つの独立した人格を持っているかのようになって自己の同一性が高度に損なわれた状態が解離性同一性障害である。事実、解離性同一性障害の患者は「別のだれか」になっている間の記憶を一切持っていないことが多く、「別のだれか」もまた「普段の自分(基本人格)」とは独立した記憶を持っていることがほとんどである。

このような理由から、解離性同一性障害の患者のほとんどが幼児期に何らかの虐待、特に児童虐待を受けている。そしてその多くは性的虐待である。 なお、欧米にはイマジナリーフレンド(想像上の友達)という概念があるが、これは幼少の子供に普通に見られる現象で成長するにつれ消失するのが普通である。


参考文献:岡田尊司 著  「人格障害の時代」

     F・パトナム他/笠原敏雄 編 「多重人格障害-その精神生理学的研究-」

参考HP:http://swedenborgian.hp.infoseek.co.jp/mpd.htm


(投稿者 SHI)


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