介護保険制度

出典: Jinkawiki

目次

概要

2000年、介護を必要とする高齢者などに福祉サービスを提供する介護保険制度が導入された。 背景には高齢化や核家族化の進展等があり、要介護者を社会全体で支える新たな仕組みとして期待された。


介護サービスの利用に先立っては、まず利用者が介護を要する状態であることを公的に認定(要介護認定)される必要がある。これは、医療機関を受診した時点で要医療状態であるかどうかを医師が判定できる健康保険と対照的である。要介護認定は認定調査の結果をもとに保険者によって行われ、要支援1、2、要介護1~5の7つの段階に分けられる(法律上、要支援認定と要介護認定は区別され、要支援の場合、利用できる介護サービスが限定される)。これをもとに、どのような居宅介護サービスを組み合わせて利用するかコーディネイトするのが介護支援専門員である。


介護サービス事業者については、厚生労働省により開設基準が定められており、都道府県から指定を受ける必要がある。介護サービス事業者は、1割負担を利用者から徴収し、残りの9割の給付費を各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会へ請求し、支給される。国民健康保険団体連合会は9割の給付費を保険者から拠出してもらい運営する仕組みとなっている。



被保険者

満40歳以上の者が被保険者となる。65歳以上を第1号被保険者といい、40歳から65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者(医療保険に加入していない者(例:生活保護法による医療扶助を受けている場合など。)は第2号被保険者ではない。)という。原則として保険者(市区町村又は広域連合)の区域内に住所を有する者を当該保険者の被保険者とする。



財源

介護給付費の財源は、公費と保険料で賄われ、その比率は50%ずつである。 財源の内訳は、原則、国25%、都道府県12.5%、市区町村12.5%、第1号被保険者保険料(以下「第1号保険料」)19%、第2号被保険者保険料(以下「第2号保険料」)31%(2006年(平成18年)~)である。当初は国50%、都道府県25%、市区町村25%であった。

第1号保険料と第2号保険料の比率は人口構成比により政令によって規定される。


(参考) 2000年(平成12年)度~2002年(平成14年)度 第1号保険料(17%) 第2号保険料(33%) 2003年(平成15年)度~2004年(平成16年)度 第1号保険料(18%) 第2号保険料(32%) 国の25%のうち5%部分については調整交付金として交付される。これは要介護となるリスクが高い後期高齢者加入割合や各保険者内の高齢者の所得格差を調整するものである。自治体関係団体は調整交付金を25%の外枠にするように求めている。


2006年(平成18年)年の改正で、介護保険施設にかかる費用費に関して国20%、県17.5%と負担割合を調整している。給付費が大きくなる介護保険施設の指定・開設権限が都道府県にあるため権限者が負担すべきという考え方の現れである。



給付の種類

保険給付の種類として介護給付と介護予防給付が主な柱である。また、条例により、市町村が独自な給付(市町村特別給付)をすることも可能である。

介護給付とは、要介護認定を受けた者が受ける給付であり、介護予防給付とは要支援認定を受けた者が受ける給付である。


第1号被保険者(65歳以上)は、介護(寝たきりなどで入浴・食事や排泄などの日常生活動作への介護)や支援(家事や身支度などの日常生活での支援)が必要な時、介護保険を適用してのサービスが受けることができる(自己負担1割)。

第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険の加入者)は、初老期認知症、脳血管障害などの老化に伴う病気又は特定疾病(末期ガンなど)の介護が必要になった場合のみ介護保険のサービスを受けることができる。



制度の改正

2005年6月に、改正介護保険法が成立し、2005年10月より一部施行、2006年4月より全面施行されている。見直しの基本的視点は次の通りである。


①明るく活力ある超高齢社会の構築 ②制度の持続可能性 ③社会保障の総合化  


主な内容としては、 1 予防重視型システムへの転換  2 施設給付の見直し  3 新たなサービス体系の確立  4 サービスの質の確保・向上  5 負担の在り方・制度運営の見直し  6 介護サービス基盤の在り方の見直し 

である。 具体的には、要介護状態等の軽減,悪化防止に効果的な,軽度者を対象とする新たな予防給付を創設 したり、介護保険3施設(ショートステイを含む)の居住費用・食費について,保険給付の対象外にすることやケア付き居住施設の充実をはかった。また、特別徴収(年金からの天引き)の対象を遺族年金,障害年金へ拡大し、特別徴収の捕捉回数の複数化(年1回から年6回へ)を行った。



制度の問題点

1 死亡の原因疾患と生活機能低下の原因疾患とは異なる

要介護の原因と死亡の原因を比較すると、脳血管疾患は共通だが、要介護の原因としては高齢による衰弱、転倒骨折、痴呆、関節疾患といった生活機能の低下を来す疾患・状態が重きを占めている。これまで行政施策として行われてきた予防対策は、主として死亡の原因となる生活習慣病の予防が中心として取り組まれ、現在「健康日本21」により推進されている。今後、介護の問題を考える場合は、死亡の原因と要介護状態の原因とが異なることを踏まえた予防対策が必要である。


2 軽度の要介護者が急増している

現在、増加の著しい要支援及び要介護1は、後期高齢者に多い。これは、骨関節疾患や腰痛症、廃用症候群などを有する高齢者に対して、いわゆる「前期高齢者時代」からの生活機能低下の予防や運動器疾患のリハビリテーションなどによる適切な対応がなされていないことが要因の一つと考えられる。


3 高齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要

これまで、わが国の予防や医療・介護のリハビリテーションは、歴史的にも脳卒中を主要な対象(脳卒中モデル)として形成されてきた。一方、廃用症候群や変形性骨関節症のようなモデルにはその重要性に対する認識が不十分であった。廃用症候群のように徐々に生活機能が低下するものについては、これを第2のモデル(廃用症候群モデル)として、脳卒中モデルと並ぶ新たな枠組みとして取り上げる必要がある。






参考文献

新版 現代社会 実教出版株式会社 2006年

『介護保険法と権利保障』 伊藤周平 2008年

www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0331-3c.html

www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/hoken/kaigo/seido/kaisei/kaiseitop.htm

ja.wikipedia.org/wiki


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