個別の指導計画
出典: Jinkawiki
個別の指導計画とは
個々の児童生徒の障害に起因するニーズに基づき、指導目標と指導内容・指導方法等が個別化され、具体化された計画である。 平成2年前後から、個に応じた指導を具体化するために作成されてきたが、平成11年3月に改訂された「盲学校、聾学校及び養護学校学習指導要領」により、障害の重度・重複化への対応という観点から、自立活動の指導と重複障害のある児童生徒の指導に際して、個別の指導計画の作成が規定された。
個別指導計画を必要とする背景
(1)社会の変化
教育が量から質への転換期を迎え、心身障害教育においても、幼児・児童・生徒一人一人の障害の状態及び発達段階や特性等に応じた専門性の高い教育が求められている。
(2)保護者の変化
少子化の傾向と関連して、保護者の我が子に対する関心や意識がこれまで以上に高まり、指導内容や方法に関する改善要求が増えている。我が子に最も適切な内容を選択し指導して欲しいという要求が主となっている。「インフォームドコンセント」の精神を基盤に、子どもの教育についての保護者のニーズを指導に反映していくことが必要である。
(3)教師・学校の変化
これまでも心身障害教育は、幼児・児童・生徒の将来を見通して、「今、何が必要か」という視点で教育計画を立て、個に応じた指導を進めてきた。また、より綿密な指導を行うために、複数の担任が指導に当たっている。その一方で、幼児・児童・生徒の主体性を尊重する観点から、今までの教育内容や方法を再度見直していこうとする必要性が生まれてきた。教師の指導がより効果的に行われるとともに、学校が保護者や地域社会の信頼を得ながらその機能を高めていくことが求められている。
個別指導計画作成上の留意点
(1)実態の把握
家庭生活表、学校生活表、諸検査の記録を作成し、幼児・児童・生徒の実態の客観的で正確な情報を把握する。諸検査の記録、行動観察、本人・保護者の二一ズなどの情報を収集し、整理する。また、前年度までの指導要録も大切な情報である。
(2)目標の設定
収集された情報をもとにして、具体的に達成可能な目標をリストアップしていく。リストアップされた目標を、個々の二一ズや生活条件などから長期と短期に整理する。長期目標は1年間、短期目標は学期を目安とする。
(3)指導計画の作成
①年間の個別指導計画の作成
学校卒業後の生活を見通して指導内容を選択する必要がある。できるだけ具体的で実現可能な目標にする。
②学期または1か月程度の期間の個別指導計画の作成
各教科・領域ごとに学期終了時に達成可能なことを記入する。「このようになってほしい」という教師の期待する姿を具体的に思い浮かべると記入しやすくなる。一人一人の幼児・児童・生徒の目標、指導の手だてを考慮して、指導の形態や授業形態などを工夫する。指導の手だては、幼児・児童・生徒の具体的な活動を予想して、必要な援助を記入する。 課題、目標、指導内容を保護者に示し、要望や意見を聞き、指導計画に反映する。
(4)指導の展開
個別指導計画に基づいて、個に応じた授業やティーム・ティーチングによる指導を工夫する。その際、具体的な手だてを明確にすることが望まれる。記録用紙を活用して、その日の指導後の評価をする。課題や指導内容を授業の担当者間で共通に理解しておくことが大切である。
(5)評価
目標が達成されたか否かの観点で評価を行う。幼児・児童・生徒の学習の成果や変化がよく分かるように具体的・客観的に記述する。評価結果は、保護者や本人に具体的な報告として、連絡帳、学級通信、個人面談、通知表などを通して伝えていく。
参考文献
特別支援教育の基礎知識 橋本創一・霜田浩信・林安紀子・池田一成・小林巌・大伴潔・菅野敦編著 明治図書
特別支援教育基本用語100 上野一彦・緒方明子・柘植雅義・松村茂治編 明治図書