個別の教育支援計画
出典: Jinkawiki
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定義
「個別の教育支援計画」とは、障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な教育的支援を行うことを目的とし、『今後の特別支援教育の在り方について(「協力者会議最終報告」)』(2003年3月28日)で提言され、文部科学省の進める特別支援教育構想の一環に位置づくものである。
また、この教育的支援は、教育のみならず、福祉、医療、労働等の様々な側面からの取組が必要であり、関係機関、関係部局の密接な連携協力を確保することが不可欠である。他分野で同様の視点から個別の支援計画が作成される場合は、教育的支援を行うに当たり同計画を活用することを含め教育と他分野との一体となった対応が確保されることが重要である。
「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の違い
「個別の教育支援計画」
障害者基本計画に示されたもの。障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から、適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な支援を行うことを目的として策定されるもので、教育のみならず、福祉、医療、労働党の様々な側面からの取組を含め関係機関、関係部局の密接な連携協力を確保することが不可欠であり、教育的支援を行うに当たり、同計画を活用することが意図されている。
「個別の指導計画」
学習指導要領に明示されているもの。児童生徒一人一人の障害状態等に応じたきめ細かな指導が行えるよう、学校における教育課程や指導計画、当該児童生徒の個別の教育支援計画を踏まえて、より具体的に児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法などを盛り込んだ指導計画である。
「個別の教育支援計画」が、子ども一人一人の生活全体を子どもの位置するライフステージに即して把握し、その生活のQOLの向上を目指した援助・支援のための「計画」であるのに対し、「個別の指導計画」は、子どもの一人一人が主体的に学校生活をおくることができるようにするための教師の指導指針で、教師による「個に応じた指導」を実現するための「計画」である。
しかし、「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」が違うとは言え、両者とも対象が子ども一人一人であり、子どもの発達保障を充実するための「計画」であるため、連続性・一貫性をもたざるを得ない。
策定する際の留意事項
子どもに対する支援の在り方の基本は、子どもの実態把握から始まる。実態の把握として収集した情報を一覧にして事前資料として作成することが重要である。
(1)子どもの教育的ニーズ把握の方法
①実態把握に際して必要な情報
子どもの実態把握をする際に、主たる支援者である保護者からの情報が大きいため、子どものニーズを把握する際には、特性としての生かしたいよさや、興味・関心がどこに向いているか、幼児児童生徒の思いや将来の希望などの情報から、日々の生活の在り方やスケジュールなどを捉えておく必要がある。基本的に、そのニーズに基づいて長期的な支援計画を設定することにより、将来の生活についての希望として3年後、6年後、卒業後などのスパンで設定していく。
②情報収集と個人情報の留意点
- 個人情報の保護
- 情報の共有
- 個別の教育支援計画の保管・管理
(2)関係機関との連携による個別の教育支援計画の記載
障害者を支援するそれぞれの機関との連携は欠かせない。支援機関としては、教育、医療、福祉、労働、地域の支援団体(親の会等)などさまざまな機関があたることとなる。現在かかわりのある関係機関等に加え、今後連携が必要になってくると考えられる関係機関も把握しておく必要がある。
今後の課題
特別支援学校における開発の努力と、地域の小中学校への支援
義務教育段階での整備体制は、かなり進んでいるが、早期発見・早期対応の観点から重要な就学前の個別の支援計画の策定と、後期中等教育における条件整備及び個別の教育支援計画の策定が喫緊の課題となっている。
意識改革を心がける
「こんなことを言っては、学校として恥だ。この点には触れないでおこう」と、真実の姿を見えなくしてしまうことがないように気を付けなければならない。抱え込むのではなく、投げ出すのでもない、新しい教師像が求められる。学校組織をあげて、意識改革を図らなければならない。
ファシリテーション知識・技能が必要
ファシリテーションとは、「組織や会議を活性化し力を引き出す」こととされている。組織とチームワークで、関係者・機関との連携とネットワークが重視される個別の教育支援計画の策定会議では、この知識・技能は特に重要である。
保護者・子どもの話をよく聞く
傾聴することがもっとも大切である。また、個別の教育支援計画の策定会議では、よくいわれる報告・連絡・相談の後の「確認」が大切になる。
障害者の権利擁護
障害者の権利擁護にかかわる条件整備と取り組みは、まだまだ十分とはいえない。個別の教育支援計画の策定においても、個人情報の保護や安心して地域生活が送れるよう、後見人制度や相談活動等で権利擁護の取り組みをさらに進めることが急務である。
参考文献
清水貞夫・相沢雅文著『「個別の教育支援計画」と生涯ケア━特別支援教育と障害児者の支援』かもがわ出版 2006
中村忠雄・須田正信編著『はじめてつくる「個別の教育支援計画」━連携のための支援ツールをつくる━』明治図書 2008
宮崎英憲編著『個別の教育支援計画に基づく個別移行支援計画の展開━特別な教育的ニーズをもつ子どもへの支援━』ジアース教育新社 2004