全国水平社
出典: Jinkawiki
被差別部落の開放を目的として作られた、被差別部落民自身の運動組織である。形式的な同情や、政府の融和政策に対抗し、人権の確保や、生活の安定向上を目指した。1921(大正10)年奈良県で水平社が結成され、22(大正11)年に京都市で全国水平社が結成された。水平社宣言では「人間を尊敬することによって、自ら解放せん」と述べて、さらに「一,吾々特殊部落民は部落民自身の行動にとって絶対の解放を期す。一,吾々特殊部落民は絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以って獲得を期す。一,吾等は人間性の原理に覚醒し、人類最高の完成に向かって突進す」と決議している。文中の「特殊部落民」とは、当時の差別的蔑称であるが、自らそう呼んで融和政策と対決し、部落民であることを恥ずべきことではなく、被差別者が差別を克服することは人間として誇りある生き方として、自身の手で解放を勝ち取ろうとした。 こうして全国水平社は激しい弾圧にも屈せず部落差別の根源である支配体制に迫り、軍国主義とファシズムに反対する運動を展開したが、1937年の日中戦争の勃発(ぼっぱつ)とともに後退を余儀なくされ、42年自然消滅の道を選ぶに至った。太平洋戦争後の1946年(昭和21)全国水平社の伝統を受け継いで部落解放全国委員会が結成され、1955(昭和30)年には部落解放同盟として改称され部落解放運動を進めている。しかし、1969(昭和44)年に同和対策事業特別措置法の実施の過程で、理論対立と実践面での評価の相違が生じ、1976(昭和51)年、全国部落解放運動連合会が分かれた。
参考文献: 高山文彦 著 :水平記 松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年 秋定嘉和/著 :部落の歴史