公衆衛生
出典: Jinkawiki
社会的存在である人間集団の健康の保持・増進を目標とする科学・技術の総称である。
定義
公衆衛生の定義として最もよく知られているのは、アメリカの公衆衛生学者であるウインスロウ(Winslow, C. E. A. 1877~1957)のものである。
「公衆衛生とは、環境の衛生、伝染病の予防、個人衛生に関する衛生教育、疾病の早期診断と治療のための医療および看護サービスの組織ならびに健康保持に必要な生活水準を各人に保障する社会機構の整備を目的とした共同社会の組織的努力を通じて、疾病を予防し生命を延長し身体的・精神的健康と能率の増進を図り、すべての住民に生来の権利である健康と長寿を得させるため、組織的に上記の成果を取りまとめようとする科学および技術である。」
とウインスロウは定義している。また、公衆衛生というのは産業革命の時のイギリスで誕生し、英米を中心に発展してきた学問である。そのイギリスにおいては1847年に公衆衛生法が制定されている。
日本の公衆衛生
日本においては第二次世界大戦後の1946年に公布された日本国憲法第25条において、
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について、社会福祉・社会保障および公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
と規定されていて、公衆衛生は国民の権利としての健康を守る国家の機能であるというように位置づけられた。このように、日本国憲法で明記されているように、公衆衛生の対象は「すべての人々」であり、健康のレベルを向上させるという点で「共同社会の組織的努力を通じて」という方法論に特徴があるといえる。また、もう一つの方法論として、最近の健康作りで「自分の健康は自分で守ろうと」というセルフケア能力を高めていく考え方が浸透しつつある。
このように、公衆衛生は集団の健康を直接の対象としていて、その実践活動は集団の健康を対象とし、その実践活動は集団を入り口として個人までを対象としている。公衆衛生は従来、上から与えられるものという社会防衛的イメージが強くみられたが、健康志向の高まりなどにより、人々の間から盛り上がる活動という特色も備わってきている。
公衆衛生の専門領域
公衆衛生の専門領域は、従来は疫学・医学統計学・産業保健・環境保健・予防医学・地域保健などがあげられていた。しかし、最近の日本では、少子高齢化・疫病構造の変化・医学医療技術の進歩・高度情報化・国際化などの時代変化によって、国際保健・社会福祉・行動医学などの新しい領域が注目されている。
また、1997年に地域保健法が施行されたことにより、公衆衛生とほぼ同義語として「地域保健」が用いられることも多くなっている。
参考文献:『保健福祉論』星旦二著 日本看護協会出版会 1997
『総合衛生公衆衛生学』藤原元典・渡辺厳一編 南江堂 1978
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