南北問題2

出典: Jinkawiki

北半球側の先進国と、南半球側の後進国との間で、発展に格差が生じている問題。


目次

歴史

南北問題の重要性を最初に指摘したのは、イギリスのロイド銀行会長サー・オリバー・フランクスである。彼は、59年11月のニューヨークの演説のなかで、「南北問題が東西対立と並んで現代の世界が取り組むべき重大課題である。」と指摘した。  50年代末以降、一躍注目されるようになった背景として、次の点が指摘されている。第一に、50年代と60年代にアジア、アフリカ、ラテン・アメリカなど、いわゆる第三世界で振興の独立国が続々と誕生したことである。第二次世界大戦前には35カ国にすぎなかった途上地域の独立国(南アフリカ共和国を除く)は、60年には77カ国、70年には98カ国にまで増大した。そして98年には、第三世界の開発途上国は150カ国を越えた。「南」の開発途上国が国の数、人口ともに世界の3/4以上を占めている。しかし途上国の多くは、政治的独立を達成したものの、経済的自立にはほど遠く、コーヒー、バナナ、ゴム、銅など植民地時代以来の一次産品輸出品に依存する、脆弱な経済構造をもっている。


格差の原因

 こうした南北間の経済格差が存在する原因に関しては、いくつかの議論が展開されている。  第一の見方は、過去の植民地時代主義の残滓として、「南」の途上国の多くが、単一あるいは少数の熱帯農産物や鉱山物などの、生産と輸出に依存する「モノカルチャー」経済であるためだとするものである。つまり、これら産品の国際市況は変動が激しく、途上国の輸出所得が不安定化したり、減少し、発展が阻害されているとする見方である。  第二の見方は、非西欧社会が伝統、封建遺制、因習、迷信、慣習や、企業家精神の欠如などで特徴づけられるように、本質的に「停滞的社会」であるためだと考えるものである。  第三の見方は、現下のシステムにおいて、先進的な世界である「中心部」が不等価交換によって、低開発的な世界である「周辺部」を収奪しているために発展が阻害されている、と考える立場である。この見方は、低開発の原因を封建遺制など国内要求に求めるのではなく、途上国を包摂する世界システムに求め、「中心部」が発展すればするほど「周辺部」は必然的に従属と低開発におかれるとするものである。  

問題への取り組み

 60年代以来「南」の開発途上国は南北格差の是正と経済的自立をめざして、主体的取り組みを始めた。まず、61年に途上諸国は国連総会で年率5%の経済成長をめざす「国連開発10年」(DDS)決議を採択させた。64年に、現行のGATT体制に不満をもつ「77カ国グループ」は、対抗組織として、国連貿易開発会議(UNCTAD)を創設し、今日まで同会議を「南」が「北」の先進国に対し一次産品、製品・半製品、資金援助など経済的要求を突きつけ、交渉によって、譲歩を勝ち取る場として運用している。さらに南北交渉の進展に不満をもつ「77カ国グループ」は、非同盟運動と連携の下に、現行の国際経済枠組み自体を改変しないかぎり、南北問題の真の解決はないとして、74年の第6回国連特別総会で、「新国際経済秩序の樹立のための宣言及び行動計画」を決議させた。もちろん、こうした「南」の開発途上国の結束によるものである。


南南問題

しかし、第3世界が必ずしも一枚岩かといえば、必ずしもそうではない。現実にはむしろ、第三世界の分化によって、いわゆる「南南問題」が顕在化しつつある。つまり、OPEC産油国やNIES(新興工業経済地域)など総体的に発展水準の高い諸国と、後発開発途上国(LLDC)、あるいは産貧国との経済格差がますます拡がりつつある。


日本と南北問題

わが国にとっても、南北問題は大きな問題である。79年に発表されたOECD調査報告書「インターフューチャーズ」によると、南北問題が深刻化した場合、最も影響を受けるのは、貿易の半ばを「南」の途上国と行う日本である、と指摘されている。 日本の開発途上国への支援の取り組みの一つとして、ODA政府開発援助(Official Development Assistance)やNGO民間協力団体(Non-Governmental Organizations)によるものなどがある。日本は途上諸国に対して、80年代前半にはODAの少なさを問題にしていたが、90年代には米国を抜いて世界第一位の供与額となった。また、近年のNGOの活動では開発途上国への教育を施すなどの活動が進められている。しかし、いずれも70年代に急速に活動が活発化したのであって、いまだ歴史は浅いといえる。


参考文献

20世紀現代史 新装版                         須藤眞志 編著 一藝社


南北問題と開発教育  地球市民として生きるために         田中治彦 著 亜紀書房

(KW)


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