南北問題3
出典: Jinkawiki
南北問題とは、先進国と発展途上国との間で、経済的な豊かさに大きな格差があるという問題です。先進国は地球の北半分に多く、発展途上国は赤道から南半分にかけて多いことから、南北問題と呼ばれます。1959年、世界銀行のオリバー・フランクス卿によって名づけられたと言われています。
人口をみると、先進国には世界の人口の約2割が住んでおり、発展途上国には約8割が住んでいます。けれども、国内総生産(GDP)の合計をみると、先進国は世界全体の約8割を占めるのに対し、発展途上国は約2割にとどまります。先進国の平均寿命が70歳以上であるのに対し、発展途上国では約60歳。貧困指数の高い国や国際貧困線以下の人口割合が、国際貧困線以下の人口割合が高い国も、発展途上国に集中しています。
経済的な貧困は、子どもたちから教育の機会を奪うため、将来いろいろな方面で社会を支える人材が育成されないことになります。また貧困は、犯罪や暴動や内戦などの原因にもなり、安定した社会の発展を妨げます。
北の先進国の多くは、15世紀から南の国々を植民地として支配しました。また先進国では、18世紀以降工業が発展しました。北の国々は、南の国々から食料や工業原料(一次産品)を輸入し、南の国々に工業産品を輸出しました。逆に言えば、南の国々は、価格が安く不安定な一次産品の輸出元にされ、また価格が高く安定している工業生産品の売り込み先にされました。その結果、北の国々では経済が発展していったのに対し、南の国々の経済発展は抑えられました。
輸出入のアンバランスから生じた経済的な収支の面での南北問題は、解消されるどころか拡大する傾向にあります。また、発展途上国の環境問題をも引き起こしています。すなわち、多くの発展途上国は今日、政治的には北の旧宗主国から独立していますが、一次産品の輸出に片寄った産業構造が変わらないまま工業化を推し進めています。その結果、大気汚染、河川や地下水の汚染、産業廃棄物(はいきぶつ)による公害、森林の伐採や焼畑による砂漠化、食糧不足などの問題が生まれているのです。
南の国々の貧困は、北の国々との間の不公正な経済構造によって引き起こされているものです。したがって、南北問題を解消するには、その構造を公正なものに変えることが必要です。南の国々の人々の努力だけでなく、北の国々の人々の協力が欠かせません。
経済構造全体を変え、南北問題を解消することは、すぐにできることではありません。それには政治の力が必要です。けれども、私たち一人ひとりが南北問題について知り、学ぶことは、問題解決のための大きな一歩となり、大きな力となります(逆に言えば、問題解決を妨げるのは、私たちの無知なのです)。また、学ぶなかで、私たちが身近にできること、将来的に考えなければならないことも、必ず見えてきます。普段の生活のなかでは気づかないことへの想像力を働かせることができるかどうか、これが南北問題解決への第一歩です。
《参考文献》