原子力発電5

出典: Jinkawiki

目次

原子力発電所

 原子炉の中でウランやプルトニウムの核分裂を持続して進行させ、核分裂の連鎖反応で発生するエネルギーを熱エネルギーにして引出し、これを利用して蒸気タービンを回転させて発電を行う発電所。  原子力発電所に使う原子炉には、いろいろな形式があるが、軽水炉、ガス冷却炉から次第に高速増殖炉や新型転換炉を開発する方向に進んでいる。軽水炉は濃縮ウランを燃料とし軽水を原則冷却材に用いる形式で、沸騰水型と加圧水型がある。天然ウランや低濃縮ウランを用いて黒鉛を減速材に炭酸ガスを冷却材に使うガス冷却炉は、コールダーホ―ル型原子炉と呼ばれている。  開発が進められている。高速増殖炉はウラン238に中性子を当ててプルトニウムとし、核燃料を増殖させながらエネルギーを起こさせようというものである。また高速増殖炉と軽水炉、ガス冷却炉の中間的な新型転換炉も研究されている。原子力発電所の建設、運転については、経済性、安全性が特に重要視されている。安全性については日本では特に耐震性が重視されている。  

火力発電との違い

蒸気 タービンを回す蒸気が原子力発電所では約 284 度、 6.8 MPa (メガパスカル)であり、石炭火力発電所の蒸気の約600度、25 MPa[1]よりも温度、圧力が低く設計されている。この理由は、核燃料棒の被覆に使われているジルコニウムが比較的高温に弱いために一次冷却水を高温には出来ないためである。また、火力発電所では超臨界流体である超臨界蒸気が使用されている。超臨界流体とは、液体の性質と気体の性質を持った非常に濃厚な蒸気であり、熱を効率良く運ぶことが出来るが高温高圧状態が必要なため、原子力発電ではこれを利用することは現在は出来ない。これらの理由から一般的な火力発電所の熱効率は約 47 %程度であるのに対し、21世紀初頭現在の原子力発電における熱効率は約 30 %程度である。尚、冷却材に超臨界流体である超臨界圧軽水を用いた超臨界圧軽水冷却炉が現在研究中であり、これを原子力発電に用いれば熱効率は45 %程度まで上昇すると考えられている。


メリット

 

現行の原子力発電の利点として、以下の諸点が主張されている。 環境汚染が少ない 発電時に地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しない。 酸性雨や光化学スモッグなど大気汚染の原因とされる窒素酸化物や硫黄酸化物を排出しない。 コストが安い 発電コストに占める燃料費の割合が他の発電方法に比べ極めて低いため、燃料価格が上昇してもトータルの発電コストが上昇しにくい。 燃料のエネルギー密度が高く、備蓄及び輸送が容易。 燃料を一度装填すると一年程度は交換する必要がないこと。 発電量当りの単価が安いため、経済性が高い。 原料の安定供給 中東に大きく依存するガスや石油と違い、ウラン供給国は政情の安定した国が多い。 核燃料物質の国際的な入手ルート・価格がほぼ確立し安定している為に、化石燃料型の発電に比べて相対的に安定した電力供給が期待できる。 技術の国際的アピール 優秀な原発技術を国外へ売り込むことができる。

実用化できれば有利となる条件 比較的少量の核燃料を繰り返し使用する核燃料サイクルの確立できれば、化石燃料資源の乏しい国でも核燃料物質の入手に関わる制約を緩和できる。 海水からのウラン採取が実現すれば燃料はさらに豊富となる。技術自体は既に存在してい 地元の経済効果 日本では、原子力発電所ができると地元には一定の雇用が期待できるほか、電源立地地域対策交付金などの電源三法交付金、固定資産税、法人税などの税収も確保できる。

デメリット

現行の原子力発電には以下の問題点が主張されている。 並外れた危険性 軽水炉の場合、万一 水が止まってしまうと、大量に発生し続ける崩壊熱を除去できなくなり、30分後には核燃料が溶けはじめてばらばらになり、2時間ほどで原子炉が損傷、破壊されるという構造上の不安定性をかかえている。このような事態は、放射性降下物(一般的に死の灰と呼ばれる)の大量放出、社会的な非常事態に直結している。 重大事故が発生すると周辺環境に多大な被害を与え、その影響は地球規模に及ぶ。国土が狭い日本において、いったんチェルノブイリ級の事故が発生した場合、放射性物質による国土の汚染は日本国内の非常に広範囲に及ぶ。

放射性廃棄物の後始末ができない。 数万年という長い半減期を持つ高レベル放射性廃棄物に対しては、地下深くに埋設して処分する深地層処分が検討されている。しかし、放射性物質の漏洩のリスクなどから、地域住民の多くがその近隣での処分に反対するため、広大な国土を持つアメリカ合衆国やロシアのような例を除き、多くの国で地下埋設の処分地確保に問題を抱えている 原子炉の解体処分にともない、低レベル放射性廃棄物に相当する廃棄物が大量に発生するため、これらの処分方法が課題となっている。 日本では高レベル放射性廃棄物の最終処分地が決まらない。

冷却に大量の海水を使う場合、立地場所が海岸沿いに限定され、津波の被害を受ける可能性がある。 後進国や発展途上国で原発が建設された場合、安全性が懸念される。 発電施設および核廃棄物処理施設へのテロリズムの危険。軍事目標としての脆弱性。 ウランは多くない ウラン資源の可採埋蔵量に由来する資源枯渇問題。 地殻中のウラン235のみの利用を考えた場合、資源がそれほど豊富なわけではない。

軍事転用の危険 天然ウランから核燃料を作る工程で発生する劣化ウランは劣化ウラン弾として使用可能。 使用済み核燃料に含まれるプルトニウムは核兵器の材料となり得る(開発国に対しては核拡散防止条約の批准を義務付けることが必要)。ただし、抽出には非常に高い技術と専用の設備が必要である。 コストが高い 電力料金を通じて支払われている電源開発促進税を主財源とする財政費用は、原子力が最も高い。 バックエンド費用は莫大な額にのぼる。 消費者が現在負担している費用は、あくまで六ヶ所再処理工場における再処理に関するもののみであり、全量再処理するのであれば、実際にはさらに費用の負担が必要になる。


参考 ブリタニカ国際大百科事典


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