同化政策
出典: Jinkawiki
同化政策とは、ある特定の文化が別の異質文化に包摂されたり、または、ある特定の文化を担う集団ないし個人が別の異質文化の担い手の一部分になる現象を、生物の同化現象と区別して社会的同化、または単に同化という。異なる二つの文化が、元の各文化とは別の等質的な文化を、強制を伴わず自発的に作り出す現象は「統合」といわれる。同化と統合は分析ないし理論上の概念としては区別されるが、現実には区別しにくい場合が多い。また強制と自発性は多くの場合、とくに個人については実際には複合している。同化は、自発的にか強制されて文化の違いを調整するなかで現れるのであるが、普通、強制は法、慣習、行政措置を通して、何らかの抑圧ないし懐柔を伴っており、強制の程度は強弱さまざまである。こうした強制を政策として制度化したものが同化政策である。
「同化」という概念
同化という分析概念は通例assimilationの訳語として用いられる。その意味は「ある個人ないし集団が、ほかの個人や集団の感情や態度を収得し、その経験や伝統を共有するにいたり、同質的な文化単位にもたらされる過程」であると規定されている。この定義によれば、同化とは少数者の文化に吸収される場合を指すことになり、その場合の主体は少数者である。ただし、自然過程のように見られた「同化」の場合には、行為の主体が明らかでないのが通常である。
「同化」の種類
同化は吸収か融合の形をとる。「吸収」の場合、強大ないし支配的な集団は弱小ないし従属的な集団に自らの文化を一方通行の形で強制し、最終的には後者の独自な伝統文化(言語、文字、宗教、芸術、価値観、習俗など)と統一性を喪失させる。多くの場合、従属集団は「吸収」される。 「融合」は、政策として施行されるにせよ民衆の自発性に基づくにせよ、集団間の支配・従属関係があるにせよないにせよ、また衝突するにせよ平和裏にせよ、異質集団間の相互調整を経て、別の新しい等質文化が生まれる現象である。現在の世界秩序を支える単位としての国民国家、およびその担い手である民族と称されるものの形成過程には、多かれ少なかれ「融合」の現象が見られたし、今日それが加速されている。純粋に単一の文化を持つ国民国家も民族も存在しない。その意味で、大局的に見れば、同化政策は人類史的に普遍的な「融合」という大舞台の上で短期的、局地的に機能したのであるが、漸次歴史の舞台から消えようとしている。
参考文献
石田 雄 2000 記憶と忘却の政治学‐同化政策・戦争責任・集合的記憶 明石書店
荘村 多加志 1992 同和問題‐人権問題の立場から 中央法規出版
渡邊 靜夫 1994 日本大百科全集 小学館