国民総背番号制
出典: Jinkawiki
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概要
スウェーデンでは、国民総背番号制度が採用されている。あらゆる行政手続きにおいてこの個人番号は普遍的に利用され、また民間の取引においても活用されている。プライバシーの侵害という議論はほとんどなく、制度は定着している。
国民総背番号というのは国民1人1人に番号を与えて、国が国民を管理するというものである。
スウェーデンで国民総背番号制度が導入されたのは1947 年である。住民登録事務が教会から国税庁に移管されたのは1991 年であり、移管の目的はIT 基盤のデータ化の促進と生活面における利便性の向上だった。
個人番号は原則として一生、不変のままである。転居や結婚・離婚、改姓・改名でも個人番号は変わらない。しかし、個人番号は性転換したときには変更される。1人に10桁の個人番号が与えられる。
※以下、国民総背番号制の内容等については、スウェーデンにおける国民総背番号制を参考にしてまとめた。
付番
新生児が生まれた時
両親が新生児の氏名申告書を出生から3 ヶ月以内に税務署へ提出する。それらの情報に基づいて国税庁が管理している住民登録中央データベース(PopulationRegister)に住民登録し、個人番号を付番する。
国外からの移住者
移住時に個人番号が付番される。
死亡した時
死亡診断書を書いた医師は死亡の事実を、また埋葬責任者は埋葬場所をそれぞれ税務署に報告する。
住民登録情報の具体的内容
個人番号、出生年月日(移住年月日)、氏名、出生地、国籍、教区名、両親の氏名、育児責任者の氏名、現住所、結婚歴、離婚歴、結婚相手の氏名、子供の氏名、養子の有無、所有不動産等。
住民登録内容の変更手続
転居や結婚・離婚・出産・養子縁組・育児責任者の変更・性転換等の場合、住民は税務署にそれらを申告する義務がある。この中では転居の手続がとりわけ重要である。転居する場合、遅くとも転居の1 週間前までに最寄りの税務署・社会保険事務所・郵便局のいずれかに変更届を提出するか、インターネット上の住所変更サイト(Adressändring)で変更手続きをしなければならない。変更申請後に、変更確認書が転居前の住所に郵送される。この確認書送付は他人の不正申告を避けるために行われる。確認書に署名して返送すると、住所変更手続きが完了する。この手続きをすると、郵便局をはじめとする他のすべての行政機関が保有する住所情報が自動的に変更される。
なお上記のインターネットサイトで、不在期間中の郵便物取りおき、再配達、郵便物の転送サービス(有料)、の申込みもできる。
住所変更を申請せずに転居してしまう人もいる。そこで社会保険手続、運転免許証の交付・更新、子供の就学手続等の時に登録済みの住所とは異なる住所が記入された場合、各行政機関はその住所変更を税務署に通告する義務がある。
登録住所が正しくない場合、本人に毎年送付される所得税確定申告用通知書が本人に届かず、税務署に戻ってくる。その場合、移動先の新事業主や社会保険事務所、地方自治体等からの住所変更通知を税務署は待つことになる。なお所得税の確定申告は国民全員の義務となっている。その確定申告のさいに現住所情報が更新されることもある。
住民登録情報の管理
住民登録情報が正しいか否かは別途、特別調査でもチェックされている。1996年に実施された1 万人調査(Västernorrland カウンティ)によると、登録情報の誤りは0.17%にすぎなかった。
人口が約900 万人のスウェーデンにおいて、個人番号や氏名の証明サービスは年間で約180 万件に達していた(1998 年)。そのうちの約110 万件は2 日以内に手続が完了していた。登録内容変更件数は年間で約200 万件ある。そのうち約100 万件が転居である。他省庁・地方自治体への通知件数は年間で260 万3件、SPAR(Swedish Population and Address Register)の毎年取扱い件数は2 億5000 万件となっている。ここでSPAR とは国税庁に附置されている氏名・住所情報提供機関であり、銀行・保険会社、信用調査会社・投資調査会社、新聞社、民間営利企業等に有料で住所等の個人情報を提供している。なお個人番号関連業務をしている国税庁職員は約600 人である。
個人番号の使用方法
個人番号はあらゆる行政手続および民間の取引において広範に使用されている。住民登録、納税、社会保険、雇用・失業、病院、徴兵、運転免許、パスポート、郵便、不動産登記、警察、教育、選挙、統計調査など。民間では銀行取引、保険手続など。統一された個人番号の使用頻度は高く、誰もが覚えている。なお個人番号が記入されたパスポートを本人確認用のID として使う場合が多い。またIC チップ入りの職員証(身分証明書、個人番号記載、顔写真つき)を本人確認用のID として使用しているケースもある。
不正行為
個人番号を利用した不正行為もある。別人による個人番号の流用は現にある。他人になりすまして転居通知をする、郵便物の盗み見等である。 不正防止のために転居の場合は本人確認を必ずしている。なおスウェーデンでは、クレジットカード犯罪はきわめて少ない。顔写真つきのID カード(パスポートなど)がないとクレジットカードは発行されないようになっている。
日本における賛否両論
賛成意見
容姿・指紋・DNA情報等をデータに新たに追加し犯罪捜査に役立てられる。韓国では、指紋の情報を含む住民登録番号とカードの携帯で犯罪検挙率が大幅にアップしている。 データは分散せずにまとめたほうが有効に活用できる。カード1つで全て管理できるので各種手続きが楽になる。 しっかり運用するシステムと運用倫理をつくりあげられればよい。
国民のID(国民総背番号)を作る事によって
(1)IDと預金口座をリンクさせる事で脱税は高確率で摘発できる。 (2)住民票、運転免許証、健康保険証、年金、パスポートなどをリンクさせれば住所変更などの手続きが合理化され、不要な行政コストが下がる。 (3)就業にID提示を必須化することで、外国人不法就労者の摘発にも効果がある。
反対意見
弊害や犯罪が起こる。例えば、役所の人間が勝手に情報を閲覧する、他人が盗用してクレジットカードを作成する、個人情報の流出など。特に、現状の行政組織を信頼できないため、国に管理を任せられないとする意見が目立つ。 また、管理されていることが気分的に嫌だとする意見もある。
意見の考察
管理が行き届ききちんと運用できるなら賛成だが、不正・汚職事件の絶えない現在の日本の行政・国を信頼できないことから、反対だとする意見が多いようだ。危険性や不安を理由に新しい制度をなかなか導入できないところがあるため、日本が保守的だからともいえる。国民の行政不信の心理を考えると、導入後の混乱を最小限にできるように国民への説明をしっかりしなければ、大きなバッシングを受けることが考えられる。国民総背番号制は国民と国との信頼関係が根本的に必要不可欠なものだといえる。