国民高等学校2

出典: Jinkawiki

フォルケホイスコーレともいわれる。 世界に例の見ないデンマーク独特の教育機関で、1844年に最初の国民高等学校がシュレスヴィヒの南部ロディンに開設された。国民高等学校の生みの親とされるグルントヴィは、学問とは試験のためとか、資格を取るためにあるのではなく、自分が納得するため、自己形成する上で大切なものであると考え、自由と対話による相互作用を重視した全人教育を目指した。当時デンマークの基幹産業は農業であったため、この新たな教育運動は農業地域で普及し、受講生の大半は農業に従事する若者たちであった。農業技術ではなく、人間や社会や国会について学んだ。このような若い農民に培われた教養は、その後農業協同組合などの新しい運動を生み出す原動力になったと言われている。その後二十世紀に入ると労働者国民高等学校や体育国民高等学校などのように、対象者や活動内容を特定化した学校も現れて多様化が進み、受講生の層も農民から一般市民へと広がって、人生を考える場、広く文化を学ぶ場としての色彩が強まり、国民高等学校は高等学校ではなく、「民衆の大学」という意味があり、その特徴は

①入学資格は18歳以上

②全寮制であること

③一般教養科目を自由に選択できること

④校長ともう一人の教師は学校敷地内に移住すること

⑤試験をしてはいけない

⑥資格を与えてはいけない

現在デンマークに約90校ある。グルトヴィの教育の根底をなすものであり、彼の教育理念がデンマークの国民的精神ともなって、今日もなおデンマーク社会に大きな影響を与えている。 大半の学校には、5~32週間の長期コースと、1~4週間の短期コースが設けられている。長期コースの受講者は主に20代の若者で、年間約45、000~50、000人が利用しており、また夏などに企画される短期コースには家族連れや高齢者の姿も多く、利用者総数は、年間約一〇、〇〇〇人といわれている。 これらの国民高等学校の中には、年金受容者(特に高齢者)を対象に、2週間コースを1年間通して実施しているところもある。2週間の受講料と食事込み宿泊基本料金は、一人約4万5千円であるが、収入の少ない人には国からの援助金の他に市からも援助金が出る場合が多く、国民年金だけで生活している人でも十分参加することができる。

今後の課題

受講者数は過去十年で約25%減少し、学校数も減る傾向にある。国際化が進み、社会の姿や人々の生き方が変わっていく中で、社会と市民がどのような教育を求めているかを見極めることが百五十年以上の歴史を誇るデンマークの国民高等学校の大きな課題となっている。

※『ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク』 野村武夫著

※『福祉の国は教育大国 デンマークに学ぶ生涯学習』 小島ブンゴード孝子


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