国際労働機関(ILO)

出典: Jinkawiki

目次

ILOの概要

国際労働機関(ILO)は労働条件の国際的規制ないし、国際的な労働者保護を通じ社会主義を実現し、世界平和に貢献することを目的とする国際的な公機関。これは「世界の永続する平和は、社会主義を基礎としてのみ確立することが出来る」という憲章原則の上に打ち建てられている。 ILOは、1日8時間労働や母性保護、児童労働に関する法律、さらには職場の安全や平和な労使関係を推進する一連の政策といった産業社会の画期的な成果を生み出してきた。

ILOの誕生

ILOは第一次世界大戦の終結にあたって1919年に結ばれたベルサイユ条約によりスイスのジュネーブに国際連盟とともに誕生。第一次世界大戦後の社会改革に対し高まる懸念、そしてあらゆる改革は国際的なレベルで進められるべきだという確信を体現するものとして設立された。国際連盟の専門機関のひとつとして活動し、第二次世界大戦による国際連盟解消後も単独存続し、戦後の1944年フィラデルフィア宣言により次のようなILOの基本目標と基本原則が拡大され再確認された。

・労働は商品ではない。

・表現及び結社の自由は、不断の進歩のために欠くことができない。

・一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。

・すべての人間は、人種、信条又は性にかかわりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつ。

この宣言は戦後における独立国家数の増大を予見し、大規模な対途上国技術協力活動の開始を明言した。そして1946年にILOは新設された国際連合と協定を結んだ最初の専門機関となり、創立50周年に当たる1969年にはノーベル平和賞を受賞。


加盟国

ILO創設当時の加盟国は43カ国であったが、2009年5月では183カ国である。加盟国の構成も、ヨーロッパの先進資本主義諸国中心の構成から、第二次世界大戦後には、アメリカ、ソ連の加盟、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、の開発途上国の相次ぐ加盟により多彩となり、ILOの活動、性格にも変化をもたらしている。


主要機関

毎年1回開催される国際労働総会(各国政府代表2名、労使代表各1名の三者構成)を最高機関とし、執行機関として国際労働理事会(毎年3回開催。正理事は政府代表28名、労使代表各14名、計56名)、常設の事務局として国際労働事務局(ジュネーブ)がある。そのほかに、アジアなど各地域会議、産業別委員会(運輸、炭鉱、衣料、農業など)、各種の事項別委員会(社会保障、移民、協同組合など)、一種の準司法的機能をもつ結社の自由実情調査調停委員会などがある。


ILOの活動

ILOの主要戦略目標は、次の4つです。

•基準並びに労働における基本的原則及び権利を推進し、実現すること

•男女が人間的な雇用を確保できるより多くの機会を創出すること

•社会保護の範囲をすべての人々に広げ、その効果を高めること

•三者構成主義と社会対話を強化すること

 この目標は、数々の手段を通じて実現されています。

1.基本的人権の推進、労働・生活条件の向上、雇用機会の増進のための国際的な政策や計画の策定

2.各国の権限ある機関が上記の政策を実施する際の指針として役立つ国際労働基準の設定と、それを支える独特の適用監視システム

3.各国が上記の政策を効果的に実施するのを支援するため、加盟国の政府並びに労使団体との積極的なパートナーシップに基づき立案・実行される広範な国際的技術協力計画

4.このような取り組みを支える訓練・教育・調査研究・出版活動


日本とILO

日本は創設以来の加盟国であったが、満州事変を契機とする国際連盟脱退ののち、1938年(昭和13)ILOをも脱退し、第二次世界大戦後51年(昭和26)に復帰、54年以降は常任理事国となっている。その後、日本の経済大国化に伴い、ILOのなかでの地位も向上した。たとえば、ILO分担金では、1994~95年度には、日本の分担率は12.28%と、アメリカの25%に次ぎ第2位となっている。2000年度の分担率は、20.26%にまで増えている。また、ILOの公用語は英語とフランス語であるが、主要会議では、スペイン語、アラビア語、ロシア語などが会議用語として認められて同時通訳が行われていたが、日本語もそれらの言語と同様、1980年6月の第66回総会で初めて同時通訳が実現した。


参考

『ILO国際労働機関』飼手真吾・戸田義男:著 日本労働協会 1960年

『ILO条約と日本』中山和久:著 岩波書店 1983年12月

ILO駐日事務所 http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/


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