国際社会4

出典: Jinkawiki

超国際化 世界の変容 一九七○年代の危機の中で現れ、米国のレーガン大統領とイギリスのサッチャー首相によって導入された政策が、本書の冒頭でもふれた新自由主義政策である。 もっとも、彼らが新自由主義政策の最初の提唱者であったわけではない。それに先立つモデルが存在した。D·ハーヴェイによれば、それは、一九七三年、チリの左翼社会主義政権に対するクーデタ後に行われた政策であった(Harvey[2005-2007])。民主的な選挙によって成立した当時の左翼社会主義政権に対して、将軍A·ピノチェトは米国政府の支持の下にクーデタを起こし、M·フリードマンに代表されるシカゴ学派の経済学理論に基づいた政策を断行した。すなわち、公的資源を民営化し、外国からの直接投資と自由貿易を促進したのである。 一方、J.Nピーテルスによれば、新自由主義の物質的母体となったのは、米国南部であった (Pieterse [2001-2007])。米国南部の経済戦略は、伝統的に低賃金·労働集約的,強搾取型生産·労働組合に対する敵視に基づいていた。第二次世界大戦後の米国では、ケインズ主義に立脚した北部のリベラルな価値観が支配的であったが、フォーディズムが危機に瀕すると、南部の経済戦略と保守思想がフリードマンのマネタリズムを理論的武器にして息を吹き返した。共和党は、かつて民主党一党地域であった南部に支持基盤を拡大したが、それに成功したのが、共和党のニクソン政権やレーガン政権であった。

新自由主義政策 戦後の福祉国家は「大きな政府」としてさまざまな公共機能を担ったが、新自由主義政策は、それらの機能を国家から民間企業に委ねることによって公共支出の削減を企図した。新自由主義政策の根幹をなすのは、「民営化」と「規制緩和」である。イギリスでは、サッチャー政権の下で「ブリティッシュ·エアロスペース、ブリティッシュ·テレコム、ブリティッシュ航空、鉄鋼、電気、ガス、石油、炭鉱、水道、バス、鉄道、その他無数のより小規模な公営企業が民営化の嵐の中で売り飛ばされた」(Harvey [2005-2007] 86)。サッチャー政権は、「持ち家、私的所有、個人主義に喜びを見出す中産階級を育成」(E訳書、八七)する一方で、労働組合の力を排除し、自治体に対する中央政府の補助金を削減し、公営企業の民営化をはかった。 民営化するためには市場メカニズムを活性化させなければならないが、そのための措置が規制緩和である。水道、通信、放送、電力、ガス、交通、金融などといった公共的性格を帯びた分野では、これまで企業活動に種々の規制が設けられていた。規制緩和は、こうした規制を取り払うことによって市場メカニズムの活性化を狙っている。サッチャー政権と並んで、レーガン政権の政策の中心も「産業、環境、職場、医療、取引関係への連邦政府による規制の範囲や内容をあらゆる方面で縮小すること」(同訳書、七五)にあった。

参考 グローバリゼーション 現代はいかなる時代なのか

投稿者 けんけん


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成