国際緊急救助隊
出典: Jinkawiki
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緊急救助隊の発足の経緯
日本は、地震や台風などの自然災害が多いため、これまでに豊富な経験と技術的なノウハウを蓄積してきた。こうした経験を途上国の災害救援に活かしたいとの思いから、1970年代後半に医療チームの派遣を中心とする国際緊急援助活動が始まりました。日本政府が初めて国際緊急援助活動を行ったのは1979年、内戦によりタイに脱出した大量のカンボジア難民への支援です。この国際問題に際し、欧米主要諸国は医療チームを中心とする援助チームをタイ・カンボジア国境周辺に素早く派遣しました。しかし当時、日本は政府ベースでも民間ベースでもこのような事態に対応する体制が確立されていなかったため、日本から派遣された医療チームの救援活動は、諸外国と比べて著しく遅れたものとなりました。 1987年には「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(通称JDR法)が施行。これにより、医療チームに救助チーム、専門家チームが加わり、現在の国際緊急援助体制の基礎が完成しました。1992年には、PKO法の改正にあわせて一部改正され、特に大規模な災害への自衛隊の派遣が可能になりました。同時に、PKO法とJDR法の対応範囲が整理され、紛争に起因する災害はPKOが、それ以外(自然災害、ビル倒壊などの人為的災害)の災害は、国際緊急援助隊が対応することで整理されました。現在はこの4チームを災害の種類や規模、被災国の要請に応じて、いずれかのチームを単独ないしは複数のチームを組み合わせて派遣しています。
国際緊急救助隊の種類と役割
1・救助チーム(2005年パキスタン救助チーム) 被災地での被災者の捜索、発見、救出、応急処置、安全な場所への移送を主な任務としています。チームは、外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁、JICA(医療班・建築専門家・業務調整員)などの隊員から編成され、チャーター機の活用などにより、政府の派遣決定後、迅速に日本を出発する準備を整えています。
2・医療チーム(2006年インドネシアジャワ島中部地震医療チーム) 被災者の診療または診療の補助を行い、必要に応じて疾病の感染予防や蔓延防止のための活動を行います。メンバーは、自発的な意志にもとづいてあらかじめJICAに登録された医師、看護師、薬剤師、医療調整員に加え外務省、JICAから編成されます。国際緊急援助隊の中で最も歴史が長く、1987年のJDR法制定前の1979年にカンボディア難民支援で派遣された時代まで遡ります。
3・専門家チーム(2003年アルジェリア地震専門家チーム) 災害に対する応急対策と復旧活動の指導を行います。たとえば、地震の被災国において建物の耐震性診断を行ったり、噴火の恐れがある火山を調査し、噴火予測や被害予測を行うなどの活動が含まれます。また新しい感染症に対して、被害の拡大を食い止めるため助言を行うこともあります。チームは、災害の種類に応じて、関係省庁や地方自治体から推薦された技術者や研究者などから編成されます。過去に公衆衛生、油流出対策、鑑識、感染症対策、火山活動予測などで派遣されています。
4・自衛隊部隊(2006年インドネシアジャワ島中部地震自衛隊部隊) 大規模な災害が発生し、特に必要があると認められるとき、自衛隊部隊を派遣します。自衛隊部隊は、緊急援助活動(医療・防疫)や船舶・航空機を用いた輸送活動、ヘリコプターによる空輸活動を行います。
国際緊急救助隊の現在
国際緊急援助隊は数多くの災害に派遣され、被災地の人々に手を差し伸べてきました。過去最大のミッションとなった2004年のスマトラ沖地震・津波では、スリランカ・モルディブ、インドネシア、タイの4カ国に救助、医療、専門家、自衛隊部隊の合計14チームを派遣。緊急対応から復旧・復興支援への切れ目のない支援を行いました。 最も歴史の長い医療チームも、これまでに大きな進化を遂げています。たとえば、近年は災害現場に即した医療機器(ポータブルX線検査機器、超音波検査装置等)の携行や、薬剤師・検査技師などの参加により、様々なニーズに対応する効果的な医療支援が可能になっています。
参考
http://www.jica.go.jp/jdr/index.html 国際緊急救助HP 読売新聞 2010年9月10日 「時事ワード百科」