天下り

出典: Jinkawiki

目次

天下りとは

 天下り(あまくだり)とは、元々は神道の用語で、神が天界から地上に下ること(天孫降臨)を指す。現代では退職した高級官僚が 外郭団体、関係の深い民間企業、特殊法人などに相応の地位で再就職することを指している。また、世代ごとの出世競争決着ごとに同 期の官僚に退職してもらって、若い官僚に回るようにピラミッド型の組織を新体制にするためにする。

広がる天下り

 高級官僚の役六割が天下りを行っている。天下りの公表対象となっている高級官僚は毎年およそ千二百人が辞めているが、そのうち 千人以上が再就職を果たしている。十人の高級官僚がいれば、だいたい八~九人は再就職している計算になる。  また、「天下り人事」という言葉が使われるように、「天下り」とは人事に関する事柄である。天下りはシンプルにとらえると「組 織による再就職の斡旋」である。このため官僚以外でもこの言葉は用いられ、民間企業にも天下りは存在する。天下りには影響を及ぼ すことのできる関係団体が必要なため、大企業による天下りが多い。例えば1980年代の東芝では大卒社員は五十歳を過ぎると会社 を去るのが通例になっていた。転出していく先は関連企業が大半で、グループ企業は600社余りあるため恵まれた環境だったという。  その後は長引く不況で状況は変わっているかもしれないが、その他の大企業も多かれ少なかれ関連企業や子会社を抱えている。東芝 と同じような「民間版天下り」の雇用慣行を持つ会社は相当数に上る。

天下りが起きる原因

 天下りが起きる原因としては先に述べた通り、上の世代の官僚に退職してもらって、若い官僚に回るようにピラミッド型の組織を新 体制にするためでもあるがもう一つの要因に「同期横並び昇進」がある。役所には同期横並び昇進という雇用慣行が存在し、同じ年に 入省した人間が横並びに出世するようになっている。これに加えて中央官庁では「後輩が先輩を追い抜かない」という人事のルールも 存在する。この二つの「年次主義」と言われる考え方が天下りが起きる原因である。役所のポストは限定されているので、キャリア官 僚といえども全員が局長になれるわけではない。同期入省者で局長になれるのは多くて数名程度。そのため年次主義という雇用慣行を 守るためには順次、出世競争に敗れたものから辞めていくということが不可欠になり、それと連動するように天下り先の確保が必要に なる。

天下りによる問題点

 天下りは一回で終わることはなく、そのことを「わたり」という。どんなポジションの役人に対しても、役所は六十五歳程度まで職 を斡旋していると考えてもよい。「わたり」が行われると退職ごとに退職金が支払われる。役人であればその退職金は税金で賄われて いるため「税金の無駄づかい」だと批判もされている。  また、天下りを受け入れる側の活力が低下したり、組織としての競争力が削がれるという問題点も存在する。一見すると企業はプラ スになったように思えるが実際には創意工夫を磨くチャンスを失っており、また、天下り役人のために昇進機会を逃した人も出てくる。 建設会社を例にとると、天下りを受け入れることで公共事業の工事を受注できるなら短期的にはこんなにいい話はないが、こういうこ とを続けていると官需に依存する企業体質が染みつく上に、場合によっては違法な手段で仕事を得るところまで突き進むことだって起 こり得る。企業が天下りを受け入れることは必ずしもプラスに作用することはない。

参考文献

中野雅至 「天下り」とは何か 株式会社講談社 2009年 寺脇 研 「官僚がよくわかる本」 アスコム 2010年


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