天下五剣

出典: Jinkawiki

天下五剣(てんがごけん)とは、童子切安綱・鬼丸国綱・三日月宗近・大典太光世・数珠丸恒次の五振りの日本刀の総称。いずれも、平安初期から鎌倉時代にかけて活躍した名工によって打たれた由緒正しい宝刀である。刀剣鑑賞の基礎が固まった室町時代に名作と定められ、現在も高い評価を受けている。


詳細

童子切安綱(どうじぎりやすつな)…平安時代、日本最古の刀匠とされる、伯耆国(鳥取県西部)の大原安綱によって打たれた太刀。天下五剣の筆頭とされる。「童子切」の異名は、丹波大江山に棲む鬼神・酒呑童子を斬ったという伝説に由来する。源頼光の佩刀であったとも伝えられている。現在は国宝に指定され、東京国立博物館に所蔵されている。

鬼丸国綱(おにまるくにつな)…鎌倉時代、山城国(京都府南部)の刀匠・粟田口国綱によって打たれた。最初の持ち主は鎌倉幕府初代執権・北条時政もしくは五代執権・時頼であったと伝えられている。時政を苦しめていた小鬼の悪夢を断ち切ったと「太平記」に記されており、そのエピソードから「鬼丸」と名付けられた。以降、邪気を祓う宝刀として北条家に代々伝えられたという。現在は皇室御物として宮内庁が所蔵している。

三日月宗近(みかづきむねちか)…平安時代に活躍した山城国の刀匠・三条宗近作の太刀。刃文を光にかざすと刃縁に三日月形の模様が浮かび上がることから「三日月」と呼ばれる。反りが大きく、身幅は先端に近いほど狭く、鐔に近いほど広くなっている。天下五剣の中でも最も美しい日本刀とされる。足利将軍家の宝刀として継承されたのち豊臣秀吉のもとに伝わり、秀吉の正室である北政所が所蔵していた。その後徳川家に贈られ、家宝として伝わった。太平洋戦争後に一度個人の手に渡ったが、現在は国宝に指定され、東京国立博物館が所蔵している。

大典太光世(おおでんたみつよ)…平安時代後期、筑後国(福岡県南西部)の刀匠・三池光世によって打たれた太刀。優美なものがもてはやされた平安の太刀としては身幅が広く重厚な造りになっており、同時代の一般的な作風からは外れている。美術的価値だけでなく、実用刀としての切れ味も鋭いといわれる。豊臣秀吉から前田利家に贈られ、以降前田家に伝わってきた。前田家で病気治療に使われたという伝承が複数存在し、病魔を祓う太刀として崇められてきたといわれる。また、前田家代々の当主が自ら手入れをしたとも伝えられている。現在は国宝として、公益財団法人前田育徳会で保管されている。

数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)…平安時代に活躍した備中国(岡山県西部)の刀匠・青江恒次の打った太刀。日蓮宗の開祖・日蓮が信者から護身用にと寄贈された。身延山を開山する際に「破邪顕正(はじゃけんせい)の剣」として柄に数珠を巻いたことから、「数珠丸」の名が付いたとされる。日蓮が亡くなると、身延山久遠寺(山梨県)で保管されたが、享保年間に行方不明になる。大正期に兵庫県の刀剣鑑定家が発見し、現在は重要文化財に指定され、兵庫県尼崎市の本興寺が所蔵している。


参考文献

「日本刀 怪しい魅力にハマる本」 博学こだわり倶楽部/著 河出書房新社

「[図解]武将・剣豪と日本刀 新装版」 日本武具研究会/著 株式会社笠倉出版社


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