女性運動
出典: Jinkawiki
女性の生活改善、地位の向上、解放をめざす運動。女性運動は近代社会の産物である。封建的共同体の崩壊と産業革命による家族の変質の結果、家族に包摂されてきた女性の生活は不安定になり、他方、自由と平等を説く近代の人間解放思想は、女性に自分のおかれた差別と依存の状態を認識させた。このような社会的・思想的変動のなかで、女性は自分の生き方を模索し、状況の変革を求めるようになる。その要求を組織的運動を通じて実現しようとしたのが女性運動である。女性の要求が生活全般にわたるものであることから、女性運動の内容も、家事の合理化、慈善事業、売春禁止、教育における男女の平等、職業労働における男女平等、公法上・民法上の諸権利、反戦・平和など多様である。これらの女性運動は、女性の生きるべき状態を作り出そうとする共通理念を持っているとはいえ、現状の把握と将来の展望について意見が一致しているのではない。各国の女性運動は、女性のかかえる多様な問題に取り組みながら、それぞれの国の事情を反映して、その性格に差が出る。近年の日本国内の女性運動としては、およそ三つの方向がみられる。第一は人権に関する問題で、それには女性に対する暴力反対、セクシュアル・ハラスメントの告発、戦時中の慰安婦問題が含まれる。第二は民法改正等に関連し、夫婦別性、離婚事由としての破綻主義の導入、婚外子差別の撤廃の要求である。第三は労働に関する問題で男女雇用機会均等法の改正、アファーマティブ・アクションの導入、無償労働の統計化が検討課題になっている。
参考文献 世界大百科事典
発行平凡社 HN KAHI