宗教戦争3

出典: Jinkawiki

宗教戦争

宗教上の問題に起因する戦争。一般には、宗教改革後の16~17世紀、ヨーロッパにおけるカトリックとプロテスタントとの対立抗争によって起こった国内的、国際的戦争をさす。どのような戦争を宗教戦争と呼ぶのかは、厳密に決まっているわけではないが、キリスト教を念頭に置いた場合、その背景や対立構造などから、4つほどのパターンに分けることができると考えられている。1、イスラム教やユダヤ教など、異なる宗教との対立を中心とした戦争。起源や伝統が大幅に異なる宗教が対立するこうしたケースでは、比較的広い地域において戦争が継続する。宗教間対立から戦いが始まるが、純粋にそうした動機のみで一貫するとは限らず、貿易の利権や領土獲得などの経済的動機や、排他的民族主義などの介在も見られる。中世の十字軍やレコンキスタなどがこれに該当する。2、キリスト教の教派間での対立による戦争。教会の権利や組織体制に対する不満、あるいは神学的諸問題が、特定のグループ、社会階層、国家の間での対立へと発展し、武力闘争にいたるもの。フス戦争、シュマルカルデン戦争、ユグノー戦争などが挙げられる。3、宗教的信仰を基盤に据え、自分たち以外の社会全体と戦おうとする闘争。闘争の相手は他の宗教や教派の信者とは限らず、世俗社会における無宗教の人々も含まる。1990年代のアメリカで起こされた、プロテスタント牧師による人工妊娠中絶反対テロなど、個人や小集団によるテロなどがこれに該当する。4、宗教的な要素が強調されされるものの、内実としては政治的対立の要素が強い戦争。異なる宗教・教派の政治権力間の抗争が発展して、領土紛争や独立運動にもなりうるもので、この種の闘争においては、宗教や教派の違いは、ある集団を他と区別する外面的な旗印として用いられる場合が多い。オランダ独立戦争や、三十年戦争などがこれに該当する。戦争と宗教の関わり方は、実際にはかなり多様であり、同じ戦争でも、それが進行するプロセスで宗教の位置づけやその関わり方は変化していくことがあるので、これでもってすべての宗教戦争が説明できるわけではない。


代表的な宗教戦争

オランダ独立戦争 スペイン領ネーデルラントが行った独立戦争。フェリペ2世の新教徒弾圧、重税政策などに反抗して1568年開戦。1579年、北部7州がユトレヒト同盟を結成して抗戦を継続し、1581年にネーデルラント連邦共和国を樹立して独立を宣言。1648年のウ エストファリア条約によって正式に独立を承認された。正式には八十年戦争とよばれる。

三十年戦争 ヨーロッパの宗教改革をめぐって戦われた、最大で最後の国際戦争(1618~1648)。ドイツの新教徒と旧教徒の争いに諸国が干渉して拡大し、のちには諸国間の権力争いに移行した。ウエストファリア条約で戦争は終結し、オランダとスイスが独立し、ドイツの新、旧両教徒は同等の権利を得た。

ユグノー戦争 1562年から1598年、カトリック教会とユグノーの対立に貴族の政治闘争が結びついて起こったフランスの内乱。サンバルテルミーの虐殺で頂点に達した。スペインがカトリック側を、イギリスがユグノー側を支援したが、アンリ4世の即位とカトリックへの改宗、ナントの勅令によって争乱は終結した。


参考文献

石川明人(2016)キリスト教と戦争 中公新書

"オランダ‐どくりつせんそう【オランダ独立戦争】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-01-30)

"さんじゅうねん‐せんそう[サンジフネンセンサウ]【三十年戦争】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-01-30)

"しゅうきょう‐せんそう【宗教戦争】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-01-30)

"ユグノー‐せんそう【ユグノー戦争】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-01-30)


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