対ロシアの経済制裁

出典: Jinkawiki

対ロシアの経済制裁

 ウクライナ問題に端を発する対ロ経済制裁の内容を見ると、2014年前半の1次、2次は資産凍結・渡航禁止と少し弱いものだった。しかし、7月16日にアメリカの方が踏み込んで、90日を超える資金の調達を禁止するということを、ガスプロムバンク、ヴネシュエコノムバンク、ロスネフチ、ヤマルLNGをやっているノバテクの4社に対して行った。ヨーロッパの方も同じく踏み込んでもらいたいということを、アメリカが強く言った。ところがこの翌日、7月17日にマレーシア航空機の撃墜事件があったということで、がらりと局面が変わった。ヨーロッパの側は、大水深・北極・シェールオイル用の機材の輸出は、事前認可が必要だと。アメリカの方は、同じ3分野に関してライセンス付与を義務付けて、そのライセンスは原則拒絶であるという、少し複雑ないい方をしているが、実質上の輸出禁止という形になった。  しかし、例えば北極のカラ海で、エクソンモービルが井戸を掘ったりしているわけで、この制裁だけだと十分規制できなかった。エクソンモービルは、井戸の堀削装置をヨーロッパから調達したため、例えば制裁の規定では8月1日以前の契約は不問にする、エクソンモービルは7月30日の契約だったから大丈夫だという、いろいろな抜け道があった。それでさらに規制を強化して、9月12日に強い制裁になった。EUの方では、サービスを禁止する、はっきりpohibitedという言い方になった対象は、深海、北極圏、ロシア国内でのシェールオイル事業である。  この時のアメリカの制裁だが、はっきりエネルギー関連5社を名指しにした。ロスネフチ、ガスプロム、ガスプロムネフチ、ルクオイル、スルグートネフチェガスに対して、大水深・北極海・シェール事業での深鉱・生産を支援する機器類、サービス、技術のアメリカからの提供、輸出、再輸出を禁止するとかなり明確に書いていたため、エクソンモービルは北極海での井戸の掘削ができなくなった。堀削作業で「ここは、こうした方がいい」などといったいろいろな助言は、全てサービスに抵触する。これで米政府は完全に抜け道を塞いだことになる。また、銀行などに対して、証券・株式などによる30日間以上の期限の資金調達を禁止した。これが、かなりヤマルLNGでの資金調達などには影響していることになる。ただし、中国もあり、ロシア国内のファンドもあるので、ロシア側は何とか新しい資金調達の対応をしようとしている。特にヤマルLNGは、ロシア政府は全力を挙げて遂行すると言っている。

参考文献

塩川伸明・池田嘉郎編(2016)東大塾 社会人のための現代ロシア講義 東京大学出版会 河原祐馬・島田幸典・玉田芳史編(2011)移民と政治 ナショナル・ポピュリズムの国際比較 昭和堂


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