市場
出典: Jinkawiki
経済学における市場とは、単に魚市場や株式市場のような具体的な場所を指すだけでなく、取引すべてを市場という。
「市場」では商品やサービスを売りたい人たちと、それを買いたい人たちが出会って、取引をする。そうした「市」は昔からあり、それは物々交換から始まりまった。やがて、「市」を通して分業が発達し、さらに貨幣が生まれ、それが広く流通するようになると、自給自足経済は本格的な市場経済へと姿を変えた。
中世には「市」が各地で開かれていて、その名残が「四日市」や「八日市」という地名に残っている。現代ではもはや人々が限られた日に特定の場所(市)に集まって取引をすることは一般的ではなくなりました。個人商店やデパート、さらにはインターネットを通じていろいろな場所で自由に売買ができ、その全体をマーケット(市場)と呼んでいる。また、自動車や電化製品などそれぞれの商品について、別個にマーケットが考えられるようになった。
マーケットで売り手(生産者)と買い手(消費者)が出会う。マーケットを介して、人々は自分の需要に応じた商品を購入し、また生産者は自分の商品を売ることが出来る。また商人という両者を仲立ちする階級も生まれ、貨幣が流通し、マーケットが発達したおかげで、人々の経済生活は昔と比べて格段に便利でゆたかになった。マーケットのおかげで、我々は欲しい商品を効率よく手に入れることが出来る。したがって、欲しいものを自分の手で自ら作り出す必要がなくなり、分業が発達する。分業の結果、商品の質は上がり、しかもその量も増大することが出来る。つまり社会全体の経済効率が上がり、生産性が増大するのである。 さらにマーケットはものの値段を決める働きを持っている。生産者は成功するために、市場での消費者の動向を見極めてなければならない。一般に需要が供給を上回れば品不足になり、価格は上昇する。価格が上がれば利潤が増えるので供給側は生産を拡大し、その結果供給が増えて価格が下がることになる。こうして需要と供給の関係から、市場のメカニズムによって、商品の価格が決まるのである。つまり、マーケットは需要と供給を均衡させるという大切な機能をもっているのだ。マーケットはまた労働者の賃金を決め、労働を適正に配分して、失業をなくす働きもする。これは労働市場における需要と供給の均衡から決まり、また金融市場によって、資金の適正な配分がはかられる。 マーケットのこの素晴らしい働きに注目したのが、18世紀にイギリスで活躍した経済学者のアダム・スミスである。彼は古典的名著「国富論」の中で、個人個人が自分の欲望のおもむくままに行動しているのに、全体で調和がとれているのは、「見えざる神の手」の仕業であると書いた。 彼の理論によれば、マーケットメカニズムが機能する限り、需要と供給は均衡し、資金も最大限活用されて、生産活動は順調に行われ、物不足や失業も生まれないはずである。しかし、現実には経済不況や失業はつきもので、19世紀のイギリスは国としては黄金期を迎えましたが、また一方で貧しい労働者の群をつくりだしたのである。
参考文献・参照文献
山口 重克【編】『市場経済―歴史・思想・現在 (新版)』 (名古屋)名古屋大学出版会 (2004/10/20 出版)