弾劾裁判所
出典: Jinkawiki
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弾劾裁判所
弾劾裁判所とは、衆議院と参議院に所属する国会議員で組織し、裁判官が犯した不正な事実などの責任を追及する機関である(日本国憲法64条)。国会議員で組織する裁判官訴追委員会で、辞めさせるようにとの罷免(ひめん)の訴追を受けたときに開かれる。 裁判官訴追委員会では、訴追をする必要があると判断すれば、出席委員の3分の2以上の賛成で弾劾裁判所に訴追することを決定する。弾劾裁判所は、衆議院と参議院からそれぞれ7人の国会議員が選ばれ、合わせて14人の裁判員で組織される。
弾劾裁判所で裁判官の罷免を宣告する場合、その審理に関与した裁判員の3分の2以上の多数意見が必要となる。
一般の裁判官を罷免する手段は、この弾劾裁判以外には、心身の故障のために職務を遂行できないと分限裁判で決定された場合に限られており、このため、裁判官の独立が担保されて、何者にも影響されずに公正な裁判ができるようになっている。ただし、最高裁判所の裁判官については、国民が直接その適格性を審査する国民審査制度があり、国民の投票により、その多数が罷免を可としたときも罷免される。
弾劾とは
そもそも「弾劾」には、罪や不正を暴くとか、厳しく責任を問うといった意味がある。このことから、大統領や大臣あるいは裁判官など、強い身分保障を受けた公務員が非行(その人の地位にふさわしくない行為)を犯した場合に、国民(実際には、国民の代表者で構成される議会など)の意思によってその者を罷免する(辞めさせる)制度のことを一般に「弾劾制度」と呼んでいる。
各国の弾劾制度
弾劾制度は、イギリスで誕生し、14世紀後半には、国王の任命する大臣や裁判官などが非行を犯した場合に、議会の裁判によって罷免したり、罰したりする制度として確立された。その後、アメリカ合衆国憲法に引き継がれた弾劾制度は、大統領を始め政府高官や連邦裁判官を罷免する制度として発展し、現在では、その形は様々ですが、世界中の多くの国々で採用されている。
日本では、憲法により、裁判官を罷免するための制度として初めて採用され(憲法64条1項)、これに基づいて裁判官弾劾法が制定された。
過去の判例
罷免訴追事件
●昭和23年(訴)第1号
被訴追者 静岡地方裁判所浜松支部判事 訴追提起 昭和23年7月1日 判決宣告 昭和23年11月27日
●昭和23年(訴)第2号
被訴追者 大月簡易裁判所判事 訴追提起 昭和23年12月9日 判決宣告 昭和25年2月3日
●昭和30年(訴)第1号
被訴追者 帯広簡易裁判所判事 訴追提起 昭和30年8月30日 判決宣告 昭和31年4月6日
●昭和32年(訴)第1号
被訴追者 厚木簡易裁判所判事 訴追提起 昭和32年7月15日 判決宣告 昭和32年9月30日
●昭和52年(訴)第1号
被訴追者 京都地方裁判所判事補兼京都簡易裁判所判事 訴追提起 昭和52年2月2日 判決宣告 昭和52年3月23日
●昭和56年(訴)第1号
被訴追者 東京地方裁判所判事補兼東京簡易裁判所判事 訴追提起 昭和56年5月27日 判決宣告 昭和56年11月6日
●平成13年(訴)第1号
被訴追者 東京地方裁判所判事兼東京簡易裁判所判事(東京高等裁判所判事職務代行) 訴追提起 平成13年8月9日 判決宣告 平成13年11月28日
●平成20年(訴)
被訴追者 宇都宮地裁判事
訴追提起 平成20年8月9日
判決宣告 平成20年12月24日
弾劾裁判所で戦後の罷免判決は、平成13年の児童買春事件で有罪が確定した元東京高裁判事以来、7年ぶり、6人目。
参考文献
裁判官弾劾裁判所公式サイト
リーガルフロンティア21 法律事務所求人NAVI
新版 現代社会 実教出版株式会社 2006
日本の裁判史を読む辞典 野村二郎著 自由国民社 2004