性同一性障害

出典: Jinkawiki

目次

性同一性障害とは

性同一性障害とは医学的な疾患名である。英語では、gender identity disorderといい、性同一性障害はその訳語である。この性同一性障害という疾患を診断するための国際的な基準には、WHO(世界保健機関)が定めたICD-10によるものと、SM-Ⅳ-TRによるものがある。

性同一性とは

性同一性とはgender identityの精神医学界における伝統的な訳語である。他の言い方では、「性の自己意識」、「自己の性意識」、「性の自己認知」、「性自認」などとほぼ同じ意味である。最近では、そのままカタカナ読みで、ジェンダー・アイデンティティという用語が主として用いられる。簡単に、「心の性」という場合もある。

性同一性障害の定義

性同一性障害は「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらかの性に所属していると認知していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に所属していると確信している状態」と定義されている。

性同一性障害の治療法

治療は大まかに3つに分かれている。 (1)精神科領域の治療者による精神的サポート (2)ホルモン治療と、FTM(女性から男性に移行したい人)の場合は乳房切除術 (3)性別適合手術

ホルモン治療について

GIDの治療法として需要な役割を果たすホルモン療法は精神療法や外科的治療に比較すると地味ではあるが、日常的に行わなければならない治療であり、どのような薬物を使用し、どのような効果があり、どのような副作用が生じるのかを明らかにすることは大事なことである。男性から女性へ(MTF)では乳房の腫大、精巣の収縮あるいは勃起力の消失などがあり、女性から男性へ(FTM)では生理の消失や声変りなどがある。また、精神的な安定感を得るためにもホルモン治療は必要とされている。

性別適合手術について

性別適合手術とは一般に性転換手術と称されてきた。当事者はこの言葉を嫌い、また sex change surgery という英語もないことから、GID研究会(Gender Identity Disorder、性同一性障害研究会)が『性別適合手術』と呼称することを提唱して広く受け入れられるようになった。Sex Reassignment Surgery(SRS)を訳した言葉で、assignとは(割り当てる、指定する、選定する)を意味する。 性別適合手術はそれぞれ精巣切除、子宮卵巣摘出を行うので永久的に生殖能力を失わせる、完全に非可逆的な手術である。内外性器の手術、陰茎、精巣、子宮、膣の手術に限ってSRSとみなす。また、男性から女性への性転換者における顔面、頚部の手術、すなわち前額、外鼻、下顎の骨切り術、甲状軟骨切除、声を高くするための声帯の手術などはSRSとはみなさない。FTMの乳房切除はかつてSRSとみなされていたが、新ガイドラインでは除外された。

日本の現状

2003年7月に「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」が成功し、1年後に施行された。これにより、一定の要件を満たせば、戸籍上の性別の変更は可能となった。しかし、特例法においては、性別変更が認められるための要件は、いちじるしく厳しい。 性別は男と女の2つしかなく、これは出生時の外性器の形状によって区分でき、恋愛や性行為はこの男女間でおこなうものである、というところから特例法は一歩も出ていない。 結果として、多くのトランスジェンダーの多様な生き方が、特例法によって法律上正式に否定されたとみることも出来る。

アメリカの現状

アメリカでは1970年代に4つの判決があり、いずれも性同一性障害の当事者が敗訴。1980年代にも8つの判決があったが、性同一性障害の当事者が勝訴した事例が2つある。また、1990年代の前半に7つ、後半には4つの判決があった。障害者差別を禁じる州法の規定に基づいて、性同一性障害の当事者を「ハンディキャップを持つ者」あるいは「精神的な障害を持つ者」として保護が得られるようになってきた。

宗教と性同一性障害

宗教といっても各々の国に何十何百とある所もあり、成立時期によっても考え方に硬軟あって一概には言えないが、「同性愛」は出てきたとしても、名所に多少の違いはあっても「性同一性障害」というものがはっきりと登場する教えは、よほど新しいものでない限り見つけるのは難しい。

仏教

仏教経典の中には、「変成男子」という語が残っている。それは「女子は五障があって成仏できないため、男子になって成仏する」という、まことに男尊女卑的ではあるが性の変更を奨励するような考えである。性別よりは、成仏することに重きがおかれている。

キリスト教

キリスト教圏では性的少数者への嫌悪がひどく、命の危険さえあるが、それは全く元々のキリストの教えの核を忘れ果てた行いである。聖書では、異性装を禁じる箇所が見られるものの、聖書の書き手たちの私見が必ずしも皆無ではないであろうことや、文化的・時代的背景を考え合わせると、それを文字通り受け取ることがそもそもの教えにかなっているとは思われない。

イスラム教

イスラム教は厳しいように見えるが、不思議と鷹揚なところもある。イスラム教では、人は「人間」であることが先で「性別」はその「人間」の属性に過ぎず、不完全な状態で生まれるとの見方をしている。しかし、神への帰依の強さを実現するためには「男」あるいは「女」のどちらかはっきりしていることは重要なので、その点から性同一性障害への治療は反イスラムとは思われない。

参考文献

『性同一性障害の社会学』 佐倉智美著

『性同一性障害って何?』 野宮亜紀・針間克己・大島俊介・原科孝雄・虎井まさ衛・内島豊著

ハンドル名:su-sa-n


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