性悪説
出典: Jinkawiki
[編集]
性悪説
性悪説(せいあくせつ)とは、紀元前3世紀ごろの中国の思想家荀子が孟子の性善説に反対して唱えた人間の本性に対する主張。「人の性は悪なり、その善なるものは偽(ぎ)なり」(『荀子』性悪篇より)から来ている。
「荀氏」第十七巻第二十三性悪篇に以下のように書かれている。人間の本性すなわち生まれつきの性質は悪であって、その善というのは偽すなわち後天的な作為の矯正によるものである。さて考えてみるに、人間の本性には生まれつき利益を追求する傾向がある。この傾向のままに行動すると、他人と争い奪いあうようになって、お互いに譲りあうことがなくなるのである。また、人には生まれつき嫉んだり憎んだりする傾向がある。この傾向のままに行動すると、傷害ざたを起こすようになって、お互いにまことを尽くして信頼しあうことがなくなるのである。また、人には生まれつき耳や目が、美しい声や美しい色彩を聞いたり見たりしたがる傾向がある。この傾向のままに行動すると、節度を越して放縦になり、礼儀の形式や道理をないがしろにするようになるのである。 以上のことからすると、人の生まれつきの性質や心情のおもむくままに行動すると、きっと争い奪いあうことになり、礼儀の形式や道理を無視するようになり、ついには世の中が混乱に陥るようになるのである。だから、必ず先生の教える規範の感化や礼儀に導かれて、はじめてお互いに譲りあうようになり、礼儀の形式や道理にかなうようになり、世の中が平和に治まるのである。 以上のことからすると、人の生まれつきの性質は悪いものであることは明瞭である。したがって人の善い性質というのは、後天的な矯正によるものなのである。
参考文献:荀氏、沢田多喜男・小野四平訳、世界の名著10 諸子百家、中央公論社