戦争と人道
出典: Jinkawiki
戦争と人道
戦争は正しく遂行しうるものだとしても、人間に対する十分な配慮(殺戮権の緩和)が必要だとグロチウスは述べる。≪無辛なるものの死は不慮の出来事によるといえども、可能な限り防止するように配慮すべき≫である。女性と子供、老人、聖職者、文筆家、農民、商人、捕虜の生命と安全を配慮することが求められる。≪無条件にて降伏するもまたこれを助命すべきである≫。また≪すべて無用なる戦闘は避けるべきである≫。 戦争を遂行する場合にも終結する場合でも、敵相互間の信義が重要であるとグロチウスは述べる。≪敵が何たるやを問わず、敵に対して信義を守るべきである≫。≪信義は不信なる者に対してすらこれを遵守すべきである≫。この意味でも戦争はまったく無秩序な状態であってはならない。 『戦争と平和の法』を通じてグロチウスが訴えたかったことは何か。それは戦争が残念ながら避けられない出来事だとしても、そこにはルールがあり、人道があり、信義があるということだ。そもそも不必要な戦争は避けるべきであり、戦争になったとしても不必要な犠牲や損害は避けるべきである。このことをすべての為政者や軍人は肝に銘じていなければならない。当時、銃や大砲が実用化され、新しい技術が戦争に応用されて戦争はますます大規模に熾烈なものになっていた。しかし、戦争のその後の深刻さからみればグロチウスの時代はまだしも牧歌的だったと見えてしまう。それでも『戦争と平和の法』が書かれていなかったら、戦争はもっと多くの人々の生命を奪い、もっと無秩序で過酷なものとなっていたであろう。戦時国際法、人道法を整備し、戦争の惨禍をくい止めようとする努力はもっと弱く、そして遅くなっていた。
参考文献 橋爪大三郎(2016) 『戦争の社会学-はじめての軍事・戦争入門』 光文社 山内進(2006) 『「正しい戦争」という思想』 勁草書房
人道的な戦争”とは何なのか http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1303/11/news010.html