戦争と近代
出典: Jinkawiki
戦争と近代 近代と戦争との関係を問うというのは、国民国家というあり方を裏返しにして語るような営みである。確かに西欧における国民国家システムの成立と拡大のもとで戦争は劇的に姿を変えていった。戦争に対する現在の想像力もそれに大きく規定されている。 国民国家においては、①中央政権的な政府が「国民」として人工的に創出された人々に強力な一元的支配を行うがそれは、②政府が「国民」という平等的なメンバーシップを保証することでもある。同一性という基準があるから、二流の国民や国民以前と見なされた人々への差別が問題となる。国民国家は少なくともその内部に対しては民主主義的傾向を持つ。さらに、③国民が国家を作るという感覚が広く共有される必要がある。国民が何らかのかたちで政府の運営にかかわることは落ち着きがよく、制度的にも民主主義と結びつきやすい。 もう一つ見逃せない特徴として、④国家は単一的存在ではなく、複数の国家群としてある。一方で国民経済を中心に国家は競い合う。同時に、国家は相互に恒常的に接触しさまざまな水準で模倣と影響にさらされている。複数の社会の間での財や人間の移動、技術や文化の伝播は人類史上珍しくないが、国家という単位が成立して以降、それははるかに常態的でかつ常識的なモニタリングを介したふるまいになる。たとえば19世紀以降の産業資本主義の展開が、こうした仕組みのもとでこそ加速したことは、何よりも日本近代の軌道が雄弁に証明している。
参考文献 野上元、福間良明(2012) 『戦争社会学ブックガイド―現代世界を読み解く132冊』 太洋社 山内一也、三瀬勝利(2003) 『忍び寄るバイオテロ』白鳳社
「戦争社会学」とメディア史研究 https://www.jstage.jst.go.jp/article/mscom/81/0/81_KJ00008159664/_pdf