排出権取引5
出典: Jinkawiki
目次 |
排出権取引とは
排出権取引とは、企業や国が温室効果ガス排出削減を約束し、その目標達成において排出権の取引を認める制度である、企業は目標より排出が超えてしまった場合に、他者から排出権を購入しなければならない。逆に、新技術導入などにより目標より排出が少なければ、余った排出権を他社に売却することができる。つまり、排出権を売買することによって、目標達成をより柔軟にし、長期目標の達成が可能となるところに、この制度の特徴がある。地球温暖化がより深刻な問題となる中で、現在の温室効果ガス排出を全世界で半分にするという目標がグレンイーグルズサミットにおいて立てられている。排出権取引はこの目標達成に全世界の国、企業を巻き込む施策として注目されている。 地球温暖化問題の解決のためには、それぞれの国が温室効果ガス排出を削減する必要があるが、どの国がどのくらい削減しなければならないのかが不明確である。削減しなければならないと分かっていてもそれを実際の活動に移すことは難しい。つまり、排出権取引は、排出権を取引できることが従で、温室効果ガス排出削減を実施することが主ということになる。 また、企業にとって排出削減目標だけが課せられると大きな義務感が付きまとい、閉塞的になるが、取引ができることによって、収益を視野に入れたり、景気の波による目標達成・未達成を吸収できるようになり、企業活動の収縮を防いでいる。
排出権とは
排出権取引では排出権が取引される。排出権とは法律上の権利ではなく、物理的実体のない無体財産であるため、法的にうまく定義することは今のところ難しいが、それを保持しているものがCO₂排出が可能であり、CO₂排出の許可証や免罪状のような意味のものである。 重要なのは、排出権が「地球がもつ環境保持機能を数値化したもの」であり、石油などと同じような有限の天然資源であるということだ。債権のように「他人に何かを要求することができる権利」ではない。つまり、地球の炭素処理能力を有効に利用するために人類が考え出した新しい手段、貨幣のような炭素に関する決済手段であると考えられる。
広がる排出権ビジネス
排出権取引が社会で認知され、排出権取引を仕事にしたいと思う人や企業が増えた。排出権取引の市場規模が数千億円から数兆円になってきているため、利益が望めると判断した経営者もいる。以下、排出権ビジネスの一例である。
- CDMを実施するビジネス:途上国でCDM(クリーン開発メカニズム)を実施し、その成果物である排出権を販売する。
- 技術開発:CO₂排出をうまく削減する技術を開発するビジネス。
- 省エネ・ESCOビジネス:省エネルギー技術・省エネのノウハウを展開する。
- 排出権トレーディング:エネルギーや排出権の値段の理論値の乖離を見つける。
- 植林バイオマス:植林を実施し、森林の炭素固定技術やバイオマス燃料を製造して排出権を狙う。
- コンサルタントビジネス:政府や企業に対して専門的なアドバイスをする。
- リーガルサービス:排出権取引やビジネスに普遍的に生じる法的・会計的専門サービス。
- カーボンオフセットビジネス:排出権を使った環境に良い商品を企画し、消費者へ訴求する。
排出量の取引制度
排出量の取引制度は、キャップアンドトレード型と、ベースラインアンドクレジット型に分けられる。
- キャップアンドトレード型
キャップアンドトレード型は排出量の目標値(排出枠)を決め、その目標値より実際排出量が多いか少ないかで排出枠を売買する仕組みである。目標値より実際排出量が多ければ排出枠を購入し、反対に実際排出量が少なければ排出枠を売却できる。
- ベースラインアンドクレジット型
ベースラインアンドクレジット型は省エネ設備導入等による排出量削減活動によって排出量が減少したときに減少分をクレジットとして付与する仕組みである。排出量削減活動をとらなかった場合の排出量を基準排出量(ベースライン)とし、そこからどれだけ削減したかを算定する。
参考文献
- スマートエナジー(2011)『排出権取引の基本と仕組みがよくわかる本』秀和システム
- 環境省
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/det/capandtrade/about1003.pdf (2019/1/14参照)
R.M