放射線3

出典: Jinkawiki

放射線とは?

真空中や高速で飛ぶ粒子や電磁波のことである。粒子には電子や陽子や中性子があるが、これらが飛んでいるんのは「粒子放射線」と呼ばれる。一方、エックス線やガンマ線など波長の短い電磁波が飛んでいるものは「電子放射線」と呼ばれる。電子、陽子、中性子が飛んでいる粒子放射線は、それぞれ電子線、陽子線、中性子線と呼ばれるが、粒子放射線はそれだけではなく、例えば陽子2個と中性子2個が結びついた複合粒子である「アルファ粒子」が飛んでいるものは、「アルファ線」とよばれる。また、放射線核種から放出される電子は特に「ベータ線」と呼ばれる。要するに、高速で飛んでいる素粒子やその複合体が「粒子放射線」だ。 一方、エックス線やガンマ線などの電子放射線は、ラジオ・テレビ・携帯電話の電波、赤外線、可視光線、紫外線などと同じく、電磁波の仲間だ。電子波というのは、電界と磁界の強弱が真空中や物質中を光の速さで伝わっていくものである。電界とは電圧がかかっている空間の状態のことで、電池につながれたプラス・マイナスの電極の間や、雷雲と地面の間などには強い電界が存在する。広い意味では、電波・赤外線・可視光線も放射線の仲間だが、エックス線やガンマ線など波長の短い電磁放射線とは違い、原子にぶつかっても電子を引き離す能力(電離作用)がないため「非電離放射線」と呼ばれる。紫外線の一部も非電離放射線であるが、短波長領域の紫外線は電離作用をもつので、エックス線やガンマ線と同様、電離放射線である。

放射線の人体影響

放射線が人体に当たると様々な影響が起こるが、それらは大きく「身体的影響」と「遺伝的影響」に分けられる。 身体的影響は被爆した人自身に起きる影響で、早期効果と晩発効果に分けられる。早期効果は被爆後数週間以内にあらわれる影響で、晩発効果は被爆後数年から数十年後に現れる影響である。 人間は7Gy程度被爆すると、ほぼ100%の人が30日以内に死亡する。約4Gyの被爆では50%が死亡する。一般に、細胞分裂が盛んな部位ほど放射線に対する感受性が高く、人体では、骨髄やリンパ節、生殖腺、腸管、皮膚などに影響が現れる。症状としては、下痢や嘔吐、発熱、白血球やリンパ球の減少、赤血球の減少、脱毛などがみられる。 晩発効果は早期効果が現れない程度の被爆を受けた後、しばらく症状が現れない時期(潜伏期)を経てからおこるもので、白血病や各種のがん、白内障、不妊などが起こり得る。 遺伝的影響は、生殖腺に被爆を受けた個人の子や孫など、世代を超えて起こる影響で、放射線によって精子や卵子などの生殖細動(胚細胞)に突然変異が起こることが原因である。ショウジョウバエなどを用いた実験では遺伝子的影響が確認されているが、原爆被爆者の2世については(染色体異常は認められているが)遺伝子的障害の明らかな増加を示す証拠は得られていない。


放射線利用と保護

歴史的にみると、放射線分野の専門家には障害がよく見られた。エックス線の発見者W.C.レントゲン博士の助手の手は、エックス線被爆で関節が変形した。トーマス.A.エジソンの助手C.W.ダリーは、手のエックス線像を蛍光板上に結ぶ実験で被写体役を務め、がんに陥った。 こうした犠牲を踏まえ、放射線の被害から身を守る課題が重視されるようになり、放射線防護学の分野が生まれた。放射線取扱上の安全基準を作るために、1928年には、「国際エックス線およびラジウム保護委員会」が設立され、それは今日「国際放射線防護委員会」として受け継がれている。1942年から1945年のアメリカのマンハッタン計画では、放射線防護の分野は「ヘルス フィジクス」と呼ばれた。「核兵器開発計画」であることを悟られないように命名されたものだが、日本の放射線防護学の専門学会は今なお「日本保険物理学会」と称している。 今日、放射線は理工学、医学、薬学、生物学、農学、などの分野で広く使われている。利用の安全を確保するために膨大な法律の体系が作られ、それを実効あるものとするために関連分野の職業人養成課程で放射線安全教育が実施され、安全管理を担当する法的資格者として放射線取扱主任者が育成されている。



参考文献:図解雑学「放射線と放射能」立命館大学名誉教授 安斎育朗


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