放射能測定器

出典: Jinkawiki

目次

電離箱、比例計数管

電圧のかかった陰極と陽極の間にある気体に放射線があたると、電離作用でプラス・マイナスのイオン対が発生し、それらが陰陽両極に集められて、電流を生じる。発生する電流は、放射線が起こす電離の量に比例するので、この電流を測れば放射線の量がわかる。このような原理による放射線測定器を「電離箱」と呼ぶ。
アルゴンやメタンを封じ込めた円筒形測定器の陰極と陽極の間に、電離箱の場合よりも高い電圧をかけると、電離作用で生じたイオン対がそれぞれの電極に引っ張られる時に加速され、電極にたどり着くまでの間に自分自身も電離を起こせるようになる。その結果、電極には、最初に生じたイオンの数の何倍ものイオンが集められるが、生じるイオン電流は最初に生じたイオン数に比例するので、このような原理の測定器を「比例計数管」と呼ぶ。

GM計数管(ガイガー・カウンター)

比例計数管の電極間に、更に1000ボルト程度の高い電圧をかけると、最初に生じたイオンが電極に引き寄せられる過程で起こす二次的な電離で生まれたイオンが更に電離を誘発するという過程が繰り返され、「電子なだれ」と言われる現象が起こる。
その結果、最初の電離で生じたイオンの数に関わり無く、大きなパルス電流が生まれる。このパルスを計算するタイプの測定器は、2人の開発者の名前を冠して、「ガイガー=ミュラー計数管」略して「GM計数管」「ガイガー・カウンター」と呼ばれる。パルスの大きさは放射線のエネルギーを反映してないので、放射線の数しか測定できない。

無機シンチレーション検出器

放射線のエネルギーを吸収して原子や分子が励起状態になると、余分なエネルギーを蛍光(シンチレーション)の形で放出して、安定状態にもどる現象が起こる。一方、金属に光(電磁波)をあ
てると「光電効果」が起こり、電子が発生する。
従って、放射線によって発生したシンチレーションを金属電極に当てれば、光が電子に変換される。この電子を「光電子増倍管」という特殊な真空管で振幅したときに生じる電流パルスを計測するのが、「シンチレーション・カウンター」である。
放射線があたると蛍光を発する物質は「シンチレータ」と呼ばれるが、シンチレータには無機シンチレータと有機シンチレータとがある。ガンマ線やエックス線計測用の無機シンチレータとしては、微量のタリウムを含むヨウ化ナトリウム結晶Nal(Tl)がよく使われるが、アルファ線計測用には硫化亜鉛ZnSが使われる。

有機シンチレーション検出器

無機シンチレータは固体(金属、結晶)で構成されているが、ここで説明する有機シンチレータには溶液(液体)のものもある。
有機シンチレータには、DPO(ジフェニルオキサゾール)などの発行剤をトルエンやキシエンなどの有機媒体に溶かした液体シンチレータやポリスチレンにp-テルフェニールを混ぜたプラスチック・シンチレータなどがある。
前者は低エネルギーのベータ線を効率よく検出できるので、³H(3重水素、トリチウム)や¹⁴C(炭素14)等の測定に広く用いられる。後者は速中性子線の測定などに用いられる。

半導体検出器

エックス線、ガンマ線、消滅放射線などの電磁波のエネルギーを分析するために欠かせない測定器として、半導体検出器がある。電離箱や比例計数管やガイガー・カウンターは、気体中に生成
されるプラス・マイナスの電荷を電極に集めて計測する方法だったが、気体よりは固体の方が相互作用を起こしやすいので、検出感度が高まる。特に、エネルギーの高い電磁波の場合には、気体との相互作用の確率が低くなるため、検出効率が悪くなってしまう。固体を検出器に使えば検出効率は高くなるが、生じた電荷を電極に集めることが難しくなる。それを実現したのが「半導体検出器」である。「電離箱の個体版」とも言うべきものであるが、電離箱の場合よりもはるかに多くの安定した電流が生じるので、放射線のエネルギーを正確に分析できる。

半導体検出器の原理

半導体とは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の間の性質をもつ物質で、代表的なものとしてシリコン(ケイ素)がある。純粋なシリコン結晶に微量のホウ素を加えたp型半導
体と微量のヒ素を加えたn型半導体を接合させて電圧をかけると、接合部で放射線が起こした電離作用により、放射線のエネルギーに比例した大きさの電流パルスが生じる。
従来はゲルマニウム半導体が使われてきたが、液体窒素で冷却する必要があるため、近年は常温での使用が可能なシリコン半導体が広く利用されている。ガンマ線などの電磁波のエネルギー分析に欠かせないが、アルファ線、ベータ線、中性子線の検出にも使われる。

参考文献

安斎育郎(2007)「放射線と放射能」ラン印刷社

H.N ときあ


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