政教分離 2
出典: Jinkawiki
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政教分離 2
信教の自由を保障するために、政治と宗教が相互に介入し合うことを禁止すること。日本国憲法は厳格な政教分離の原則を採用し、国や地方公共団体が特定の宗教に特権を与えたり、財政的援助を供与したり、自ら宗教的活動を行ったりすることを禁止している。
津地鎮祭訴訟
事件のあらまし
三重県津市は、市の体育館の起工式にあたり、神社神道の儀式にのっとった地鎮祭(建築に取りかかる前に、土地の神を祭って工事の無事などを祈願する儀式)を行い、その費用を市の公金から支出した。これに対し、地鎮祭に参加していたとある市議会議員は、これは憲法第20条及び第89条の政教分離の原則に反し、違憲であるとして、市長が市に対して支出金額を賠償することを求めて住民訴訟(地方自治法第242条の2)を提起した。
判決の内容
1.津地裁判決(1967年3月16日):合憲
地鎮祭は、「習俗的行事」であるとして合憲判断。原告は敗訴。
2.名古屋高裁判決(1971年5月14日):違憲
本件地鎮祭は、「特定宗教による宗教上の儀式であると同時に、憲法第20条3項で禁止する『宗教的活動』に該当する」として、違憲の判断。
3.最高裁判決(1977年7月13日):合憲
憲法の政教分離の原則は、「国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いを持つことをまったく許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが……相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするもの」という目的効果基準を用いた上で、地鎮祭の「目的は、建築着工に際し土地の平安堅固、工事の無事安全を願い、社会の一般的慣習にしたがった儀礼を行うという専ら世俗的なものと認められ。、その効果は神道を援助、助長、促進しまたは他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められないのであるから、憲法第20条3項により禁止される宗教的活動にはあたらない」として、合憲。
愛媛玉ぐし料訴訟
事件のあらまし
愛媛県が公金から靖国神社と県護国神社に玉ぐし料などを支出したのは違憲であるとして、住民が訴訟を起こした。
判決の内容
1.松山地裁判決(1989年3月17日):違憲
靖国神社がほかの宗教団体とは違う特別な印象を一般に与え、その活動を援助、助長する効果を持つとして違憲。
2.高松高裁判決(1989年5月12日):合憲
神道の援助、助長の特別の関心を呼ぶとは考えられず、国家機関による宗教的活動にはあたらないとして合憲。
3.最高裁判決(1997年4月2日):違憲
津地鎮祭訴訟の最高裁判決で示された、「国およびその機関の活動で宗教とのかかわり合いが、相当とされる限度を超え、その目的が宗教的意義を持ち、その効果がその宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為が違憲である」という基準を適用しつつ、靖国神社への玉ぐし料の奉納が「宗教的意義を持つことを免れず、特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、県と靖国神社とのかかわり合いが相当とされる限度を超える」として違憲。 この裁判で、初めて最高裁が憲法の政教分離の規定をめぐり、違憲判決を示した。津地鎮祭訴訟の折に示された同じ政教分離の基準(目的効果基準)を厳格に用いた判決が下された。
政教分離の原則をめぐるその他の訴訟
1.自衛官合祀拒否訴訟
殉職した自衛官の妻の意思に反し、自衛隊山口地方連絡部が護国神社に合祀。
山口地裁判決(1979年3月22日):違憲
広島高裁判決(1982年6月1日):違憲
最高裁判決(1988年6月1日):合憲
2.箕面忠魂碑・慰霊祭訴訟
大阪府箕面市が忠魂碑を公費で移転し、碑前での慰霊祭に市教育長などが参列。
大阪地裁判決(1982年3月24日):違憲
大阪地裁判決(1983年3月1日):違憲
大阪高裁判決(1987年7月16日):合憲
最高裁判決(1993年2月16日):合憲
3.岩手靖国訴訟
岩手県議会が首相の靖国神社公式参拝を決議、玉ぐし料を公費から支出。
盛岡地裁判決(1987年3月5日):合憲
仙台高裁判決(1992年1月10日):違憲
4.靖国公式参拝訴訟
中曽根元首相が靖国神社へ公式に参拝。関西訴訟
大阪地裁判決(1989年11月9日):憲法判断を示さず
大阪高裁判決(1992年7月30日):違憲の疑い
参考文献など
1.『広辞苑 第五版 逆引き広辞苑』 岩波書店 2004年
2.『最新図説 政経』 浜島晃 浜島書店 2007年