教科書制度
出典: Jinkawiki
教科書の定義
教科書とは、「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であり、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するもの」とされている。(発行法第2条)
教科書の種類と使用義務
すべての児童生徒は、教科書を用いて学習する必要がある。教科書には、前述のとおり文部科学省の検定を経た教科書(文部科学省検定済教科書)と、文部科学省が著作の名義を有する教科書(文部科学省著作教科書)があり、学校教育法第34条には、小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならないと定められている。この規定は、中学校、高等学校、中等教育学校等にも準用されている。 なお、特別支援学校並びに特別支援学級において、適切な教科書がないなど特別な場合には、これらの教科書以外の図書(一般図書)を教科書として使用することができる。
教科書制度の沿革
戦前
各教科で教授すべき内容を教科書によって示したので、教科書中心の教育となり、教科書は絶対的な権威を持っていた。教科書の指定は、教師を拘束するものではなく、教師は指定された教科書以外のものを使用することができた。しかし、明治10年代になると文教政策にも変化が現れ、それまでの教科書の選択は、一方的に各都道府県、各学校にもまかせていたものを、国民教育の方針に適合しないもの、あるいは児童に適切でない内容の教科書があるとして、明治13年に文部省は地方学務局に取り調べをさせ、調査した結果を各都道府県に通達させ、不適当と認めた教科書の使用を禁止した。小学校および、府県立中学校、師範学校の教科書を選ぶ場合には、文部省の許可を受け、その許可を得たものを使用することとされた。しかし、この認可制度は府県において、教科書の採択を決定してから文部省の認可を受けらなければならず、実際の使用までに相当の期間を要するという不便があり、明治19年より教科書の検定制度が実施されることになった。同年5月に「教科書図書検定条例」を定めた。当時の教科書検定の性格は、教科用として「不適切な教科書」を排除する消極的なものであり、「良い教科書」にするための改善・評価を任務とする積極的なものではなかった。特に、小学校の教科書については厳格に実施された。
戦後
昭和20年9月15日、文部省は「新日本建設の教育方針」を発表し、「戦争終結に関する大詔の御趣旨を奉体して世界平和と人類の福祉に貢献すべき新日本建設に資するが為め従来の戦争遂行の要請に基く教育施策を一掃して文化国家、道義国家建設の根基に培ふ文教諸施策の実行に努め」ることを明らかにしたうえで、教科書については、「新教育方針に即応して根本的改訂を断行しなければならないが差当り訂正削除すべき部分を指示して教授上遺憾なきを期することとなった」と述べた。ここに示されている「訂正削除すべき部分」の「指示」は、同年9月20日の「終戦に伴ふ教科書図書取扱方に関する件」という文部次官通達において削除の基準と例を掲げて行われた。こうして削除すべき部分が示され、そこに墨を塗るという形で「墨塗り教科書」が現れた。昭和22年3月31日に学校教育法が制定され、小・中学校の教科書に関しては、監督庁の検定もしくは認可を経た教科書図書または監督庁において著作権を有する教科書図書を使用しなければならないことが定められた。教科書図書の検定は、その図書の内容が学習指導要領に準拠しているかどうか、その図書の構成、印刷、ページ数、用紙、定価等が適当かどうかを調査するものとした。また、文部省は「教科書図書検定規則」を制定し、その図書が教育基本法及び学校教育法の趣旨に合し、教科用に適することを認めるものと定めた。
参考文献
・教科書検定 高橋史郎著 中公新書
・教科書検定の思想と歴史教育 遠山茂樹著 あゆみ出版
・教科書制度の概要:文部科学省 www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901.htm
(投稿者:TR)