教育バウチャー制度

出典: Jinkawiki

 教育バウチャー制度とは、政府が子どもを持つ家庭に対して「バウチャー」という引き換え券を支給することによって、そのバウチャーを私立学校の授業料に充てるなどといったことが可能になるため、保護者や子どもにとっては学校選択の幅が拡大し、学校は集まったバウチャーの数に応じて行政から学校運営費を受け取ることができるという制度である。この制度によって公立学校と私立学校との間に競争原理を働かせ、公立学校改善を促そうとするねらいもある。1962年、経済学者のフリードマンは自身の著書である「資本主義と自由」の中で、「両親に公立学校の教育費と等しい額面のバウチャーが政府から支給されれば、このバウチャーは子どもが入学した公立・私立の学校教育費に充当されるため、両親は子どもを希望する学校へ転校させることによって、転校前の学校に不満を表明することができる」と主張し、政府によって換金されるバウチャーのもとで、生徒獲得のために多様な学校が設立され、学校間の競争の激化や教育の質向上が促されるとされた。教育バウチャー制度の実施例は、米国のウィスコンシン州ミルウォーキー市、オハイオ州クリーブランド市、フロリダ州などがあり、いずれも低所得層や教育環境が悪い学校に通う子どもなどを対象にしたもので、一種の社会格差是正策として導入されている。


教育バウチャー制度の実施例

  • ウィスコンシン州ミルウォーキー市

 1990年にウィスコンシン州が創設したもので、家庭の所得が公的困窮レベルの1.75倍(4人世帯で年間3万193ドル)以下の幼稚園児から高校3年生までを対象に、生徒1人につき5553ドルを上限にバウチャーを支給している。

  • オハイオ州クリーブランド市

 1996年にオハイオ州が創設したもので、家庭の所得が公的困窮レベルの2倍(4人世帯で年間3万5330ドル)以下の幼稚園児から中学2年生までを対象に、生徒1人につき2250ドルを上限に支給している。

  • フロリダ州

 1999年に創設され、州規模で実施されるものとしては初めてのものである。同州の全公立学校に対し5段階評価が行われ、落第の評価を4年間のうち2年受けた公立学校に通う生徒に対し、生徒1人につき3472ドルを上限にバウチャーを支給している。


日本での導入について

 授業料などの公私格差がなくなり、国公私立の区別なく学校を自由に選べるようになるなど、子どもをもつ家庭にとって教育バウチャーは魅力的な面を多くもっている。ただし、一部の人気校だけに予算が集中し学校間の格差が拡大する、地理的に学校選択が困難な地方部と自由に学校選択できる都市部の教育格差が広がるなどのデメリットも指摘されており、文部科学省は教育バウチャー制度の導入に慎重な姿勢を示している。現在政府与党である自民党のなかでも、積極的推進派の議員もいれば反対派の議員もおり、意見はまとまっていない。


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