教育測定運動

出典: Jinkawiki

目次

エドワード・L・ソーンダイク(1874‐1949)

アメリカの心理学者・教育学者。教育評価の分野では、教育測定運動の父と言われる。 ソーンダイクは1904年に「精神的社会的測定学序説」を著し、個人内測定への理論的根拠を与えた。「およそ存在するものは、何らかの量をもって存在する。完全に知るということは、その質的側面だけでなく量的側面を知ることも含む。」という言葉に示されるように、教育的事象に対する測定的観点を、初めて明確な形で強調した人物である。

教育測定運動

教育に客観的な測定を導入することにより、教育の合理性や教育効果の向上、試験などの改善を図ろうとした運動で、20世紀初頭のアメリカを中心として盛んに展開された。これは世界的にも影響を与えている。

教育測定の動きは知能測定の試みからも影響を受けた。1905年にフランスのビネー(Binet,A.)らによって考案された知能検査がアメリカでも反響を呼び、多くの知能検査が開発され、教育測定運動に弾みをつけた。 この運動の主張の中心は「測定」であり、「客観性」である。ソーンダイクは「全て存在するものは、何らかの量において存在する」と述べ、学力は測定可能であると主張した。 教育測定運動とは、自然科学における測定法の発展を背景にして人の認知的側面について科学的・客観的な接近可能性を高めようとした試みである。

背景

客観テスト作成への動きは、ソーンダイクを中心とした教育測定運動の展開によって初めて本格化になった。アメリカでは19世紀末期頃から、それまで多く用いられていた口頭試問や論述式の筆記試験の場合、試験評価者の主観によって得点が大きく左右されることや不確かな基準が影響する、という欠点をもつことが批判されたためでもある。実際に、同一答案に対して、採点者が異なった場合には採点も分散することが明らかになった。 客観テストを作成しようという動きの中で特に強調されたのは、すべての回答者に対して同一の意味内容をもつと同時に、誰が採点しても同一の結果が得られるようなテスト項目を作成することであった。

教育測定に対する批判

論述テストの難点を克服するためにつくられた客観テストの出現によって始めて子どもの学力を客観的に把握する方法が確立された。しかし、このような方法によっては真の学力を把握することは不可能であるという批判が、ソーンダイクらが活動していた1910年代からすでに強かった。このような批判の主要な点は、客観テストは断片的、人工的な項目の寄せ集めにすぎず、個別的な知識に関する記憶を試験することはできても、論理的推論、批判的検討、創造的総合、といった高次の知的過程をみることは不可能である、というものであった。そして1930年代になると、新しい学習心理学や教育学が出現し、教育測定運動は(教育)評価運動へと吸収されていく。

教育測定と教育評価

○教育測定

・学習効果を客観的、非人間的操作によって厳密、かつ正確に量的に表現しようとする

・用具の客観性、信頼度と統計的基準を重視

・主として、教科の達成と知識と児童の孤立的な行動に関係する

○教育評価

・価値に関連し、流動する教育目標に向かう児童の成長及び発達過程に関心を持つ

・用具の妥当性を本質的なものと考える

・児童の経験と学習の動因と全体的行動に関係する

日本への導入

アメリカにおける教育測定運動の進展は、日本の教育界にも大きな影響を与えた。大正中期から昭和初期にかけて、当時の算術、読み方、書き方、英語など多くの教科についての標準テストが次々に作成され、個別式および団体式知能テストの標準化が盛んに行われた。 今日では教育測定は、教育評価の一部として重要な役割を果たしている。

参考

梶田叡一 著 「教育評価」 有斐閣双書

森敏昭 秋田喜代美 編集 「教育評価 重要用語300の基礎知識」 明治図書

田中耕治 「学力評価論入門」 京都・法政出版

田中耕治 編 「よくわかる教育評価」 ミネルヴァ書房

http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%95%99%E8%82%B2%E6%B8%AC%E5%AE%9A/


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